医療事務に携わる職業人として私たちにできること~病院内の環境調整について~
はじめに
政府が進める働き方改革では,我が国の「生産性向上」を目指してAIやロボットの推進を後押ししている.AIなどの普及が進むことで10~20年後には様々な職種がなくなると言われている.そのような中,医療事務はAIやロボットに代替される可能性の高い仕事の一つに挙げられており,受付・会計・レセプト業務といった作業は今後AIによる自動化が進むと考えられている.
目的
これからは「AIやロボットの導入」といわれている時代の中で,医療事務に求められることも変化してきている.今後必要とされる医療事務に携わる職業人として私たちに何ができるのか,また,求められることは何なのかを考える.
方法
1.「病院での受付はAIと人間のどちらが良いか」というアンケートを学生45人(対象年齢20代)に実施.このアンケートの結果をもとに,今後人間に求められることについて検討を行う.
2.実際に病院で実施されている環境の配慮について調査を行う.
結果
1.アンケートの結果,人間が良いと回答した人は全体の80%を占めた.それに対し,AIが良いと回答した人は20%であった.人間が良い理由として記載されていた内容は,質問しやすい,臨機応変に対応できる,感情を読み取り共感できるなどであった.
2.病院で実施されている環境の配慮については,さまざまなことが行われていた.例えば,老眼鏡やアクアリウム水槽,ウォーターサーバー,コールちゃん,受付再来機,呼び出し機,検温器,院外処方箋,オストメイト専用トイレ,スロープ,キッズスペース,陽だまりサロン,図書室,本棚,下着説明会,ウィッグなどがあった.
考察
アンケートの結果,受付対応は人間が良いと回答した理由は,主に接遇面についてであることが分かった.よって,あらゆる接遇面の中で環境調整による患者のおもてなしについて調査を行い,今後の環境調整に役立てることとした.今回の調査から,AIより人間が行う受付の方が良いと感じる人が多いことが分かった.これを踏まえて,今後人間の受付対応に求められることをまとめた.聴力障害の人にはまず補聴器を持っているかを確認する.筆記用具とメモを用意し表情や口元が見えるように配慮するなど工夫する.高齢者への対応について,道を案内するときにゆっくり歩く,大きな声で話すなどの工夫をする.その他にも,知的障害など話す意欲はあるが自分の気持ちを表現するのが難しい人への対応の工夫や,患者の不安をコミュニケーションで取り除いたりする.障害者の人以外でも,病院の環境を変えたりすることが良いと分かった.例えば清潔感を出すための工夫や,感染予防対策,雰囲気作りなどをする.表示板を分かりやすく掲示し,イラストや短い文章を使って院内の案内をする.AIの操作方法の説明,車椅子の方への対応など,私たち人間にしかできないことが多くあると考えた.
参考文献・引用
- 久田奈味ら:AIと医療秘書のこれから.MedicalSecretary,16(1);18-19,2019. 井上蒼ら:もし医療秘書(事務)の仕事をAIが代行したらAIのメリットとデメリットについて.MedicalSecretary,16(1);20-21,2019.