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2022年度 課題研究発表会
ポスター演題

小学 5 , 6 年生を対象とした子どもの強さと弱さと困難さの アンケート調査と作業療法導入の検討の一事例 ~ SDQ を用いた情緒や行動についての 特性把握と作業療法導入の具体的検討~

キーワード:メンタルヘルス精神発達鳥取市の A 小学校 5 、 6 年生
作業療法士学科
鈴木 雄介/安次富 寛太/伊藤 寧音/村松 ひかる

はじめに

令和5年4月1日から子ども家庭庁が創設されることが決定され,子どもの育成が重要な時期であり,子ども保健を含めた医療的アプローチの有効性を検討する機会が必要と考えた.今回,鳥取市のA小学校5,6年生を対象とし,コミュニケーション能力の特性に対しSDQ(StrengthandDifficultiesQuestionnaire:子どもの強さと困難さアンケート)を実施して,作業療法の具体的な導入課題を検討していくことを立案した.

対象と方法

<対象>鳥取市内のA小学校5,6年生(男子94名,女子77名)

<方法>SDQによる子どもの情緒・行為・多動/不注意・仲間との関係・向社会的な行動などのメンタルヘルス全般について25項目の質問項目を回答してもらう.各項目について,「あてはまらない」なら0点「,まああてはまる」なら1点,「あてはまる」なら2点と,3件法で評定する.なお日本版SDQにはカットオフ値が存在しないため,分析として全国の小中学生の標準化サンプル(親と教師が回答)との標準偏差を用いて比較した.

結果

小学5年生と小学6年生の比較結果として,小学5年生の総合的な困難さが小学6年生よりも高くなった.男女差の比較結果として,小学5,6年生どちらとも女子児童の総合的な困難さが男子児童よりも高くなった.全国の小中学生の標準化サンプル(親と教師が回答)と小学5,6年生との標準偏差を求めた結果,小学5年生と標準化サンプル(親)との標準偏差では総合的な困難さが1.8となった.また標準化サンプル(教師)の標準偏差は2.93となった.小学6年生と標準化サンプル(親)との標準偏差では総合的な困難さが1.15となった.また標準化サンプル(教師)の標準偏差は2.25となった.

考察

文部科学省によると小学5年生頃まで見られるギャングエイジは,大人に対する意思表示が希薄化すると述べている1).また斎藤は,小学6年生の時期は思春期前期に移行し,社会性を身に付け子どもらしいふるまいの減少が起こると述べている2).よって発達段階の違いにより,小学5年生が小学6年生より総合的な困難さが高い原因となっていると考える.男児と女児の発達の違いによって総合的な困難さに性差が生じている原因となっていると考える.藤原は,児童の自己開示は教師に比べ母親への開示度が高く,学年が低いほどよく開示すると述べている3).児童と教師の間での開示度が低くなり,児童の考える困難さと教師の考える困難さに乖離が生じた原因となったと考える.よって小学5,6年生のメンタルヘルスにおける作業療法導入の重要性は高く,子どもの特性に応じた集団的な作業療法が必要となると考えた.

参考文献・引用

  1. 1)文部科学省:子どもの徳育の充実に向けた在り方について.https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/053/gaiyou/attach/1286128.htm[参照2022-10-15]
  2. 2)斎藤誠一:思春期の身体発達と心理的適応について思春期発達段階とその心理的特徴.日教心理会発表論集,32;172,1990.
  3. 3)藤原雅彦:教師と児童の人間関係自己開示を中心に.日教心理会発表論集,37;534,1995.

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