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2022年度 課題研究発表会
ポスター演題

後方ジャンプに対する膝関節屈伸筋力の関係性の検討

キーワード:BIODEX後方ジャンプ膝関節屈伸筋
理学療法士学科
中村 駿介/有松 陸翔/池井 鈴音/和泉 優里/前田 彩巴

はじめに

強力な筋力を必要とするスポーツ選手では,その競技の練習のみでは十分なレベルに到達せず,筋力訓練を併せて行い強化する必要がある1).ジャンプ動作は多くの競技で用いられ,様々な種類があるが,私たちはサッカーのヘディングやバスケットボールのシュートなどで用いられる後方へのジャンプ(以下:後方ジャンプ)に着目した.ジャンプ動作には,膝関節屈伸筋力が強く影響することが分かっているが,後方ジャンプと膝関節屈伸筋力の関係性についてはほとんど検討されていない.本研究では,後方ジャンプと膝関節屈伸筋力の関係性について検討した.

対象および方法

<対象>健常男性13名/女性10名,計23名.平均年齢は22.6±3歳,平均体重は男性77.4kg,女性62.9kg.<方法>ジャンプ動作は,カウンタームーブメントジャンプ(以下:CMJ)を採用した.採用理由は,伸張―短縮サイクルによって発揮される筋力を測定するジャンプ動作として,多くの研究がCMJを採用しており,フィールドテストとして用いられてきたためである2).また,CMJは静止立位にて開始するジャンプ動作であるため,離地前の条件を統一することができ,公平な条件かつ安全にジャンプ動作を測定することができる.動作方法は先行研究3)と同様に「できる限り思い切り,高く跳んでください」と口頭指示して動作を行わせ,着地後のつま先の位置が離地前の踵の位置よりも後方にあること,フォームを崩さずに踏切および着地できたものを成功試技とした.膝屈伸筋力の測定には,SAKAImed社のBIODEX(system4BDX-4QX)を用いて,等速性膝屈伸筋力測定時の角速度を60deg/secで行い,最大トルク/体重にて筋力を求めた.また,ジャンプ動作は,Phyphox(加速度計)とUgotoru(高性能カメラアプリ)を用いて滞空時間を計測し,得られたデータをPearsonの相関係数の検定により比較検討した.

結果

最大トルク/体重の平均は,膝屈筋で83.3Nm/kg(%),膝伸筋156.7Nm/kg(%)であった.ジャンプ動作の滞空時間(最高値)の平均は,0.47secであった.滞空時間と膝屈伸筋の相関係数は,膝屈筋力:0.471,膝伸筋力:0.374であった.

考察

本研究では,膝屈伸筋がそれぞれ,後方ジャンプにどの程度影響を及ぼすかを検討するため,膝屈伸筋力と後方ジャンプの滞空時間との相関を求めた.その結果,膝屈伸筋力と滞空時間では,膝屈筋力:0.47,膝伸筋力:0.37と膝屈筋力は膝伸筋力に比べ有意に高値を示したが,ともに低い正の相関であり,強い相関は認めなかった.相関係数が低値であった要因としては,角速度60deg/secで行った膝屈伸の運動が,実際のジャンプ動作時の膝屈伸と,筋力の発揮様式が異なってしまったことが考えられる.先行研究でも,水平面の移動を伴うジャンプ動作は,等速性膝関節トルクの中でも,角速度180deg/secにて,最も相関が高かった4)と報告されている.このことから,後方ジャンプは,水平面での移動を伴うジャンプであるため,等速性膝屈伸筋力を測定する際の角速度を高く設定すべきであったと推察される.

参考文献・引用

  1. 1)津山薫ら:サッカー選手の等速性筋力とMRIからみた下肢筋力特性.体力科学,56(2);223-232,2007.
  2. 2)J.L.Mayhewetal.:Genderdifferencesinanaerobicpowertests.EurJApplPhysiolOccupPhysiol,60(2);133-138,1990.
  3. 3)遠藤俊典ら:リバウンドジャンプと垂直跳の遂行能力の発達に関する横断的研究.体育学研究,52(2);149-159,2007.
  4. 4)村本名史ら:大学女子バレーボール選手における跳躍高および等速性膝関節筋力の関係.バレーボール研究,16(1);1-6,2014.

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