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2022年度 課題研究発表会
ポスター演題

運動処方が運動習慣獲得に及ぼす影響

キーワード:行動変容 エルゴメーター運動処方運動継続
理学療法士学科
田中 歩/井川 智也/清水 柚衣

はじめに

生涯にわたり,運動習慣を身に着けることは,健康寿命の延長・介護予防に寄与する.スポーツ庁の世論調査1)では,運動・スポーツが必要であると感じている者は多く,その中で運動を行っていない者は全体の半数近くいる.鍋谷ら2)は,「運動アドヒアランスを継続することはかなりの困難を伴うものであるため,多くの者が明確な運動処方のプランの提案を求めている」と述べている.このことから,処方の有無が運動継続のための行動変容に関連があると考えられる.また,運動中の心拍変動が大きいものほど運動継続が行いにくいと言われている.そのため,運動前後のバイタルサイン(以下,VS)の変動と行動変容の変化量の相関関係から,行動変容アプローチを行う際に,効果的な処方の内容についての示唆を得ることを目的とした.

対象・方法

運動習慣のない若年健常者男女計23名を対象とした.運動として,エルゴメーター(コナミ社製AEROBIKE75XL3)を使用し,10分間実施した.実施条件並びに実施順序を,1運動処方無しと2運動処方有りの2条件とし,1後に2を行った.運動負荷として1では,10Watt,回転数45~85rpm,2では,体重から算出したWatt数,回転数50~60rpmとした.実施手順として,運動前アンケートに回答、条件運動を実施(1日目).2日目はアンケート以降の手順を実施.3日目終了後に再度アンケートに回答した.VS測定を開始前,開始5分,終了直後に実施した.

解析方法

アンケート結果を単純集計・クロス集計,各運動が与えた行動変容の変化量を対応のあるt検定で比較した.行動変容とVSの変化量の相関関係をピアソンの積率相関(以下,PPC)にて算出した.

結果

各運動が与えた行動変容の変化量の結果,p値は0.05<0.64であり,有意差があるとは言えなかった.

PPCより1前後でのVSの差は,血圧0.18/0.48,脈拍-0.13.2前後でのVSの差は血圧0.15/0.14,脈拍0.09であった.以上より各数値は≒0のため有意差があるとは言えなかった.

考察

今回,運動処方が行動変容に与える効果に優位な差があるとは言えなかった.要因として,アンケート結果から対象者が過去に運動歴がある者のみのため,本研究の運動強度では不十分であったことが挙げられる.片山3)は「運動強度が低いと運動習慣の定着には貢献しない」「強度の高い運動を実施できれば成功体験を強く感じ,それによって自信を得て,運動習慣の定着につながる」と述べている.

このことから,運動歴のある者には運動習慣がなくとも,これまでの運動量と現在の身体状態を考慮した処方を行うことで,2を継続したいと感じる者が増加すると推察する.

今後の課題として,対象者の選定方法の再考,対象人数の拡大,運動の条件設定,介入期間の延長,アンケート内容の検討を行う必要性があると思われる.

参考文献・引用

  1. 1)スポーツ庁:令和2年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(令和2年11~12月調査).https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/chousa04/sports/1415963_00004.htm[参照2022-10-1]
  2. 鍋谷照ら:運動継続のための新しいアプローチ.健康科学,23;106-116,2001.
  3. 3)片山靖富:運動教室で実践した運動強度が運動習慣の定着に及ぼす影響.教育医学,67;190-201,2021.

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