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2022年度 課題研究発表会
ポスター演題

ペットボトルを使用した呼吸筋トレーニングが呼吸機能に及ぼす影響

キーワード:ペットボトル呼吸機能呼吸筋トレーニング
理学療法士学科
圓城寺 真帆/田淵 美優香/中村 基規/堀 雅人/村本 光

はじめに

少子高齢化が進む日本では,在院日数の短縮など,医療費の適正化対策が推進されている.それに伴い今後は,デイサービス等の介護サービスを利用する高齢者がさらに多くなると予想される.加齢により運動機能や呼吸機能は低下するが,デイサービス等では呼吸機能へのアプローチはあまり注目されていないのが現状である.また,呼吸筋に対するトレーニングは医療機器を使用するため施設などに導入するのは難しい.そこで今回,安価に入手できるペットボトルを使用した呼吸筋トレーニングが呼吸機能に及ぼす影響を明らかにし,その有用性について検討する.

対象および方法

<対象>本校に在籍する、喫煙者を除く健常男女 20名(19~26歳)

<方法>対象者をペットボトル群とThresholdIMT群(以下IMT群)に分け呼吸筋トレーニングを行った.ペットボトル群は,330mlのペットボトルを使用し,飲み口を口にくわえペットボトルを吸って潰すように指示し,その後咥えたまま息を吐きペットボトルを元に戻してもらう.IMT群の吸気圧は41cmH2Oとした.1日6回5セットを週3回4週間にわたり実施した.スパイロメーター(オートスパイロAS307)を用いて,トレーニング前後の呼吸機能の測定を行った.得られたデータについては,正規性を確認後,各群のトレーニング前後の比較は対応のあるt検定を実施し,2群のトレーニング前後の差の比較には2標本t検定を実施する.優位水準は5%未満とした.

結果

被験者は計20名,年齢は平均20.25歳であった.両群ともに,予定通り4週間実施することができた.各群のトレーニング前後の差については,正規性を確認後,対応のあるt検定を実施した.ペットボトル群では1秒量と努力性肺活量の項目で有意な差が認められた(p<0.05).IMT群ではすべての項目において有意な差があるとはいえない結果であった.2群のトレーニング前後の差の比較についても,正規性が確認できたため2標本のt検定を実施した.すべての項目について有意な差があるとはいえない結果であった.

考察

今回,呼吸筋トレーニングにおけるペットボトルの有用性について検討を行った.各群のトレーニング前後の比較ではペットボトル群のみ努力性肺活量と一秒率で有意差が認められた.窯田らは1)吸気筋に対するインターバルトレーニングにおいてVC,TV,FVC,FEV1.0に有意な変化は認められなかったと報告しており,IMT群の結果もこれに準ずるものである.佐々木は2)IMTとEMTを組みあわせて行うと最大吸気量と最大呼気量が増大すると報告している.ペットボトル群で有意差が認められたのは吸気筋に加え呼気筋にも負荷圧がかかることにより,吸気筋,呼気筋に対するトレーニング効果が得られたためと考える.研究結果より呼吸筋トレーニングにおけるペットボトルの有用性が示唆された.一方で,2群のトレーニング前後の差の比較については有意な差があるといえない結果であった.今回の研究では,IMT群は吸気時のみの負荷で有った為,負荷方法の統一等も含め,更なる検討が必要である.

参考文献・引用

  1. 1)窪田美香ら : 若年健常者を対象とした吸気筋に対するインターバルトレーニングの有用性 .日呼吸ケアリハ会誌 , 29(2); 292-298, 2020.
  2. 2)佐々木誠 : 各疾患患者における呼吸筋トレーニ ングの効果とそのエビデンス . 秋田大院医研科保健紀 , 25(1); 71-97, 2017.

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