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2022年度 課題研究発表会
ポスター演題

Physiological Cost Index から検討した 脚長差に対する上り勾配歩行時の影響

キーワード:PCI上り勾配歩行脚長差
理学療法士学科
堂園 結花/橋本 空瑠美/植田 亜依/福田 萌花/山本 菜々美

はじめに

高齢化に伴い脚長差の原因となり得る疾患が増加傾向にある.細田1,2)は脚長差のある症例では異常歩行を誘発し歩行動作に大きな影響を及ぼすことを示している.一般的に機能的脚長差は3cmからと言われているが,脚長差の有無がPhysiologicalCostIndex(以下:PCI)や心拍数などの身体エネルギー消費に関してどのような影響を及ぼすのか疑問を抱いた.また,脚長差の影響を示すために平地だけでなく様々な環境下での検討が必要となる.そこで健常者に対する一側下肢への作為的な脚長差が上り勾配歩行時におけるPCIと歩行率,心拍数差に及ぼす影響について検討した.

対象および方法

<対象>若年健常者20名(18-23歳
<方法>服装と靴は学校指定の物を着用し,利き足側に補高を用いて作為的な脚長差を設定した.靴底に0~4cmの5種類の補高をランダムに装着し勾配での歩行練習を3分間実施した.15分間の休憩後,安静時心拍数を計測し,3分間の勾配歩行を実施した.再度歩行後に心拍数の計測を行った.トレッドミルの勾配を9%(傾斜角度:5度),速度は4km/hに設定し,歩行率,心拍数差,PCIを算出した.統計には反復測定分散分析及び多重比較検定を行い,有意水準を5%未満とした.

結果

PCI,心拍数差についてShapiro-Wilk検定で正規性が確認されなかったためFriedman検定を行った結果,前者p<0.1136,後者p<0.1136で有意差はみられなかった.歩行率についてはShapiro-Wilk検定で正規性を確認し反復測定分散分析を行った結果,p<0.8880で有意差はみられなかった.

考察

今回,脚長差がPCIに及ぼす影響について上り勾配歩行での検討を行った結果,歩行率については先行研究3)と同様に有意差はみられなかった.その要因として,歩行速度を統一したことで一定の歩幅を強制され,歩行率への影響がみられなかったと推察した.心拍数差とPCIについては有意差がみられなかった.心拍数差は0cmと4cmで値が大きく,1cm~4cmで増加傾向がみられた.その要因として休憩後の安静時心拍数が5種類の実施における同一被検者内で安定していなかったため運動前後の心拍数差に影響を及ぼし,心拍数差を用いて算出するPCIについても同様の影響をもたらしたと推察した.

先行研究3)で平地歩行時における脚長差の影響が示されていることから,上り勾配歩行時においても影響が生じると予測する.勾配歩行や健常者に対する脚長差歩行の再現性は研究の限界点として考えられる一方で,練習後における安静時心拍数の回復時間の検討や先行研究3)で得られた快適歩行速度での実施により,上り勾配歩行時の影響について示すことができると推察した.

参考文献・引用

  1. 1)細田多穂ら編:理学療法ハンドブック第1巻.第4版,協同医書出版社,657-658,2013.
  2. 2)前掲1),1000.
  3. 3)竹井仁ら:PhysiologicalCostIndexから検討した脚長差に対する靴補高の必要性.理学療法学,23(4);237-241,1996.

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