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2023年度 課題研究発表会
ポスター演題

過疎地における地域高齢者の買物状況の調査報告~買物拠点減少に伴う生活への影響の考察~

キーワード:スーパーマーケット手段的日常生活動作過疎地域高齢者
作業療法士学科
坂根 宗一郎/花田 柊人/山本 一颯/山本 知亜紀

はじめに

買物という手段的日常生活活動は,地域高齢者 が生活を送る上で重要な役割を持つ.しかし近年, 「買物弱者」と呼ばれる人々の増加が問題となっ ている.総務省の調査報告1)によると高齢化の進 展や1人暮らし高齢者の増加,食料品販売事業所の減少といった状況から日常の買物に不便を感じ る者の数は今後も増加していくものと言われてお り,ここ鳥取県においても例外ではない.

そこで今回私たちは,地域のスーパーマーケッ ト( 以下SM) 閉店に伴い利用者にアンケートを行 い,地域高齢者にとって買物の持つ意味や価値を明らかにする研究を行った.そしてその結果から,前述のような状況も踏まえ,作業療法に携わる者として地域高齢者の在宅生活を支援する為にどのような介入が必要となるのかを考察することとし た.

対象

○高齢者 各店舗30名ずつ計60名(※ここでは調 査店舗の高齢者の定義に合わせて60歳以上と設定 する.) ① A 店:市街地に立地し徒歩圏内に他SM あり. ② B 店:町内唯一のSM,他店舗まで車で約20分 かかる.

方法

9月末までに閉店が予定されているSMA・B 店 の2店舗で,買物に来られた60歳以上の高齢者を対象にアンケートを実施.その結果を基に単純集 計とKJ 法でまとめ,考察を行う.

結果

A 店と比較して高齢者の年齢層はB 店で高く,移動距離に関してもB 店では自宅から店舗まで1km 以上ある人が54%を占めている.70%以上が 他店舗での買物を検討しているA 店と比較して, 町内唯一のSMであるB 店では閉店後の買物手 段に後継の店舗を選択している人が40%,未定と なっている人が7%,既存のネット通販や宅配, 移動販売の利用を検討している人は7%以下という結果になった.来店目的では買物以外に「対人交流」「気分転換」「運動」「日課」といった意見 が見られた.また,自由記載欄よりA 店では店 自体に対しての存続意見が多く,B 店では唯一の SM ということもありSM がなくなることに困るという意見が多く見られた.

考察

アンケート結果より,特にB 店では店舗閉店に伴い買物の代替手段の検討が必要であり,行政や企業への働きかけ・協力依頼が求められると考え る.また,買物が困難な状況になることで外出機会が減少し,心身機能面への影響として廃用症候 群のリスクが高まる可能性がある.さらにその状態が続くことで,家族負担の増加に加えて,その 人にとって重要な作業ができなくなることが推察される.考えられる介入として,地域のコミュニティを形成し,作業療法士が主体となって地域高齢者とともに体を動かす介護予防を目的とした軽い運動を行う場を提供するなど,買物の持つ多様 な目的を満たす活動を考えていく必要があると考える.

参考文献・引用

  1. 総務省行政評価局:買物弱者対策に関する実  態調査結果報告書 2017年7月.https://www.soumu.go.jp/main_content/000496982.pdf [ 引用2023-10-30]

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