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2023年度 課題研究発表会
ポスター演題

音楽によるリラックス効果に持続性があるか

キーワード:「ながら」習慣のある者クラシック音楽作業効率
作業療法士学科
蘆崎 光太/胡子 由希/熊谷 知大/長原 結菜

はじめに

本学科の過去の卒業課題研究では環境音楽によ る作業効率の変化について検討し,音楽のある環 境では作業効率は低下するが正確性が上昇し,同 じ音楽でもテンポ(再生スピード)の違いが作業 効率へ影響する可能性を示した¹).また菅ら²) は,普段音楽を聴きながら勉強をしている者にとって は作業中の音楽呈示がリラックスするなど学習環 境として好ましい側面があり,「ながら」習慣の ある被験者では好みの音楽よりもリラックス音 楽を聴いた時の方が集中できたことを明らかにし た.そこで,クラシック音楽を聴きながら作業を 行う際の副交感神経優位のリラックス状態が保た れる効果を「音楽によるリラックス効果」と定義 し,それによる作業効率向上効果の持続性につい て検証しようと考えた.

対象と方法

1)対象:本学学生( 計188人) を対象とした事前 アンケート(回収率55.3%)で「普段音楽を聴き ながら作業をしていて,クラッシック音楽を快と 感じる」と回答した25人(適合率24.0%)から,従属変数をできるだけ類似させたA 群12人・B 群 12人を作成し,24人を選定した.

2)場所:本学6階の防音室内

3)音響刺激:Vivaldi 作曲「四季」春 第一楽章

4)計算課題:同じ難易度の2桁同士の計算問題60 問2種類を,計算課題X・Y として作成した.

5)手順:①同群の対象者4人を防音室に入れる. ②音楽のない環境下で計算課題X を実施し,A 群では音楽呈示環境下で3分間の休憩を挟んだ後,音楽呈示環境下のまま計算課題Y を実施する.B 群では音楽呈示環境下で3分間の休憩を挟んだ後,音楽を停止して音楽のない環境下で計算課題Y を実施する.それぞれ遂行時間を記録する.③後 の正誤確認により,誤答数を記録する.④被験者 を入れ替えて手順①~③を繰り返し,全対象者の データ採取を行う.⑤データの集計・解析を行う. 解析❶:同群の計算課題X・Y の遂行時間・誤答 数の差を,対応のあるT 検定で分析する.解析❷: A 群とB 群の「計算課題X・Y の遂行時間の差」と「計算課題X・Y の誤答数の差」を,対応のな いT 検定で分析する.

結果

被験者都合で両群共に1人が欠員し,A 群11人 (男性6人・女性5人,平均年齢19.1±1.1歳)・B 群 11人(男性6人・女性5人,平均年齢19.1±0.7歳) であった.解析❶は,両群で計算課題X・Y の遂 行時間に強い有意差(P <0.01)を認めたが,誤答数はどちらの群にも有意差を認めなかった.解 析❷は,いずれも有意差を認めなかった.

考察

遂行時間結果からは,リラックス音楽を聴いた 直後であっても音楽鑑賞下での課題遂行と同様に,作業効率向上効果が期待できそうである.誤答数結果からは,正確性への影響はないと言える.

本研究は,『「ながら」習慣のある者はリラック ス音楽鑑賞下で作業効率が向上する』という前提 に基づき,音楽鑑賞後でも音楽鑑賞下と同様の効 果が期待できるかを検証するデザインだった.そ の前提にも対照群を設けておかなければ,学習効 果による作業効率向上を否定できないため,不十 分な研究デザインだったと感じた.

参考文献・引用

  1. 朝倉祥希ら:環境音楽による作業効率の変化,第3回鳥取市医療看護専門学校課題研究発表会プログラム,17,2019.
  2. 菅千索ら:計算および記憶課題に及ぼすBGMの影響について:被験者の「ながら」習慣の違いに関する検討,和歌山大学教育学部教育実践総合センター紀要,18;59~68,2008.

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