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2023年度 課題研究発表会
ポスター演題

座位行動と呼吸機能の関連性について

キーワード:スパイロメーター呼吸機能座位行動肺活量
理学療法士学科
大西 絢音/井上 康太郎/谷口 鈴果/前田 響太郎/徳田 宏貴/清水 準也

はじめに

長時間の座位行動は生活習慣病の発症や死亡に 関する疫学的知見が示されている.長時間の座位姿勢は循環器系に影響を与え座位保持20分により高齢者はその直後の動作能力が低下する1)と述 べられ, 健常成人でも安静時と比較して10分以上の車椅子座位は圧支持換気の低下を招き,深部静 脈血栓症発症の可能性を高める2)など比較的短時 間の座位行動において循環器系に影響を及ぼすこと, その後の動作能力に影響を与えることが先行 研究で述べられている. 本研究では循環器系と密 接な関係のある呼吸機能に注目し座位直後と座位 継続後の呼吸機能の比較をした.

対象

本校在籍の非喫煙者,呼吸器疾患を呈していない若年健常者20名を対象とする.

測定方法

呼吸機能の測定はスパイロメーターを用いて肺 活量,一回換気量,予備呼気量,予備吸気量,最大吸気量,1秒率,%肺活量の計7種を計測する. 検査前にスパイロメーターの操作説明と練習を2 回行う.来室前からの直近までの動作の影響を減 らすために5分間の背臥位を取り条件を統一する. 背臥位をとった後に椅坐位となって計測の準備を行う.本研究では椅坐位で背もたれにもたれかかる状態を脱力姿勢と定義し20分間の脱力姿勢を取 る.

脱力姿勢になった直後を開始0分時とし開始0 分,10分,20分時の呼吸機能をスパイロメーター で測定する.統計解析は各座位保持時間における 呼吸パラメーター(肺活量, 一回換気量, 予備呼 気量,予備吸気量,最大吸気量,1秒率,%肺活量) について,反復測定の分散分析にて比較・検討し た.

結果

肺活量に主効果が認められ,多重比較検定の結果,肺活量0分<20分,0分<10分で有意差が認められた(p <0.05).また,肺活量10分−20分とその他の項目には有意差が認められなかった(p > 0.05).

考察

肺活量は0分時と比較し10分時,20分時に有意 に向上した.その要因として, 背臥位をとったことによる重力の影響や自重での床面圧迫で胸郭背 面の動きが制限され,機能的残気量の低下,一時 的に胸郭可動性低下が起こり,その後時間経過により胸郭可動性の制限がなくなったことにより10 分時,20分時に向上したと考える.

肺活量では有意差がみられたが,その他の項目に関しては有意差がみられなかったため,比較的短時間では呼吸機能に影響を及ぼさないことが分かった.

今後の課題として,安静時姿勢の際に胸郭背面を圧迫し易い背側位ではなく腹臥位にする必要があると考える.

参考文献・引用

  1. 髙橋裕二ら:座位保持時間が高齢者の起立 ─歩行動作に与える影響.理学療法科学,26 (3);341–345,2011.
  2. 中村拓人ら:車椅子座位保持が下肢深部静脈血流速度に及ぼす影響. 東海北陸理学療法学術大会誌,26;17,2010.

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