menu

2023年度 課題研究発表会
ポスター演題

リハビリ期患者の自発性を高める援助~整容ケアが活動意欲の向上につながった一例~

キーワード:意欲向上整容ケア自発性
看護学科
小橋 絢香

はじめに

モーニングケアは高齢化する患者の回復促進という看護の観点から重要な日常生活行動援助になりうる.今回,気管支喘息での呼吸苦によりリハ ビリテーション(以下リハビリと略す)意欲に乏しい高齢者を受け持った. 整容ケアを行い自宅での生活活動を取り入れた結果,意欲的な言動がみ られ活動量が増大した. この事例を振り返り,高 齢者のリハビリ意欲を引き出す関わりについて考 察する.

事例紹介

A 氏90歳代女性.気管支喘息,要介護3.吸 入と内服のみとなり, リハビリ中. しかし, SPO291% ~95で喘鳴や肺雑音,咳嗽がみられ, 体動時呼吸苦があることでベッドサイドのポータ ブルトイレでの排泄でもトイレに座り休む姿がみ られた.入院前は独居で生活し畑仕事もしていた が,入院中は臥床傾向で筋力低下によるADL の低下がみられた.リハビリでは,平行棒1~3歩で 「あーえら.今日はもうやめとこうか」と活動量 が増えなかった.そのため退院が延期され,それ によりさらに意欲が低下していた. ベッド上では小説を読み「昔は先生をしていたの」 リハビリには「私には地味な色は似合わない」と 真っ赤なカーディガンを好んで着るなど,しっか りとした意思表示はみられた.

看護の実際

A 氏の希望である自宅退院を目指しADL 向 上のためリハビリを行うという方針で,日々の ADL は声掛け介助しながら実施していた.加えて教師として人前に立つ職に就かれていたことや身だしなみへの意識が高いことから整容ケアを取 り入れた.リハビリ前に車椅子で洗面所まで移動 し,鏡の前に座らせ,顔を洗っていただいた.すると,用意していた櫛を持ち,自発的に髪をとくことや保湿剤を顔へ塗布する姿がみられた.その後のリハビリでは「頑張らなくっちゃ, 寝てばっ かりじゃいけないでしょ」と前向きな発言がみら れ,これまで3歩程度だった歩行距離も,3往復に拡大した.

考察

市村ら1 )は「急性期の段階から患者の自発性に着目した関わりが重要であり,鏡を用いた整容ケアは,看護師が身近なところから始められるケアの一つである.7名中5名の患者に自発性評価点の上昇を認め、対象者の表情が明るくなり,発語が 増えることがわかる」と述べている. A 氏も整容ケアにより,これまで受け身で行っ ていた行為を自発的に行うことで生活意欲が向上し,リハビリ意欲の向上につながったと考える. 鏡は整容ケアにおいて患者に視覚的刺激を与える手段としても有効であり,定期的な整容ケアは生活にメリハリをつくり,その後の患者が一日の活動開始へのきっかけとしても適している. 高齢者にとって,現在の生活が自身のもつ文化や 価値観と一致していることは非常に重要なことで ある2)といえる.入院前のA 氏は,言動から, 教師として働いていた事から身だしなみに整え対 外的な活動を行い,そのことに誇りをもっており, これを習慣化していたと感じられた.入院で一時 中断していた整容ケアを再度取り入れたことで, 意欲向上に結び付けることができた.

結論

リハビリ期患者に整容ケアを取り入れ,在宅での生活行動に近づけることで,活動意欲が増し, リハビリ意欲の向上に影響を与えることができ た.

参考文献・引用

  1. 市村佳奈ら:脳卒中患者に対し鏡を用いた整容ケアケアの援助を試みて- 急性期における患者の自発性を引き出すために- 厚生連医誌,29(1);19-22,2020.
  2. 正木治恵:老年看護学概論( 真田弘美編). 改定第4版, 南江堂, 東京,178,2023.

ページトップへ戻る

close