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2023年度 課題研究発表会
口述演題

色彩環境が注意力と巧緻性に与える影響について~作業面の色が食事動作にもたらす変化~

キーワード:作業能率色彩環境食事動作
作業療法士学科
伊福部 崇司/川口 那月/杉森 夏鈴/矢部 永

はじめに

作業療法では対象者に対し環境調整も含めた介入を行っていく必要がある. 色彩環境は住空間, 作業空間等において快適性や作業能率を決定づける要素となっており, 色彩環境が人間の短時間作 業能率へ及ぼす影響について実験的な検討を行う.

対象および方法

被験者は本校学生31人を対象とする. 実験色彩 環境は, 無彩色( 白) と加法混色3原色,R,G,B(赤, 緑, 青)の合計4色を使用する. 検査時は机上の作業面 を検査ごとに各色紙で覆い, 高さ70cm, 作業面44 ㎝×64㎝の机を使用し, 高さ45㎝の椅子座位にて5 分間のビーズつまみを繰り返し実施する. 実施順 による慣れが結果に影響しないよう練習を数分行 う. また疲労による影響を防ぐため休憩を挟んで 行う. その後, 各色の時間内でのビーズのつまみ 数を集計してt 検定で分析する. 最後に被験者の 主観的評価をアンケートの結果を集計して, 主観 的な疲労度と好みによるビーズ数増加量の差異の 有無を分析する. 本研究内での作業能率とは時間 内でのビーズつまみの数とした.

結果

作業を実施し, 無彩色に対するビーズつまみの 結果に対してt 検定用いて検証した.t 検定の結 果,R,G,B の3色全てにおいて両側確率が0.05より 小さいため無彩色に対し有意差が認められた. 特 にB において有意差が大きく, 合計, 平均値とも に最大となった. アンケートでは,31名中29名の学 生が色彩環境による作業能率の変化を感じ, その うち19名がB において疲労感を強く感じたと答え た. また, 自由記載のアンケートでは,B において 「目への刺激が強かった」,「一番集中しやすかっ た」との感想が得られた. 被験者の色の好みによ るビーズの数増加量の差異は認められなかった.

考察

研究の結果から, 色彩環境は食事動作場面において作業能率に影響を与えるといえる. 山崎ら1)は 作業において精神的負担が大きい環境でパフォー マンスが向上するとしている. また, 松田らは2) 作業時の感情についてBの色彩では「正確に作 業ができる」「集中力が落ちない」との結果が得 られたとしており,B での精神的負担に加え, 色彩の持つ特性により作業能率が向上したと考えられ る. 今回の結果より, 注意障害によって食事に集 中することの難しい対象者の食事環境への介入に 活かすことが出来ると考えられる. しかし, 本研 究では, 食事動作場面以外での作業能率の向上が 認められるかが調べられていない. 今後の研究で は, 技能の向上・疲労による影響を限りなく少なくするとともに, 食事動作場面以外の作業における作業能率に関する研究を行っていくことが求め られる.

参考文献・引用

  1. 山崎 寛享ら: 意思決定型作業における時間的制約がパフォーマンスに与える影響に関する研究. 人間工学,39(3);123-130,2003.
  2. 2)松田 博子ら: 色彩環境が作業時の精神面に与える影響について. 日本色彩学会誌,23(suppl);56-57,1999.

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