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2023年度 課題研究発表会
口述演題

看護学生の臨地実習前の感情状態に関する実態調査

キーワード:ストレス看護学生臨地実習
看護学科
濵中 姫菜/蓮香 朋葉

はじめに

看護基礎教育において実習は,看護実践能力を育成 するうえで不可欠な過程である1).看護学生が臨地実 習に取り組む際には,新しい環境や様々な責任,時間 的制約などの要素が組み合わさり,ストレスを感じる ことがある.また,人間関係や看護過程の展開,看護 記録などに対する不安の強いことが報告されている2 ). このような臨地実習に対する看護学生の実習前の感情 状態を理解することは,学習効果や提供するケアの質 に影響を与える要素を明らかにする上で重要である. 今回,鹿児島大学版臨床実習用ストレス質問紙(Clinical Stress Questionnaire:鹿大版CSQ)) 3 )を用いてA看護 専門学校看護学生の領域実習前の感情状態について調 査を行った.

対象および方法

A 看護専門学校3年生に,初回領域実習前に鹿大 版CSQ の評価を1回行い,自身の感情状態を各項目 で評価する.鹿大版CSQ は,否定的感情と肯定的感 情を測定する尺度であり,「脅威的感情」を問う「心 配だ」「不安だ」「気がかりだ」「圧倒されている」「び くびくしている」「恐ろしい」の6 項目と,「挑戦的感情」 を問う「意欲がある」「希望を持っている」「燃えてい る」「情熱がある」「勇気が出てくる」「わくわくする」 の6 項目,「有害の感情」を問う「うんざりだ」「むな しい」「がっかりしている」「腹だたしい」挫折感を感 じる」の5項目の計17項目から成っている 3).

結果

研究に協力が得られたのは3 年生の46 名であった. 「脅威的感情」「挑戦的感情」「有害の感情」の中で, 最も強い感情を示す尺度である「全くそうだ」を選択 した項目は「脅威的感情」である「不安だ」が最も多 く,63%であった.一方で,最も少なかった項目は,「挑 戦的感情」の「勇気が出てくる」であり,0%であった. また,「全くそうだ」を選択した6 項目の平均比率は, 「脅威的感情」で33%,「挑戦的感情」で4%,「有害 の感情」で7%であった.このことから,看護学生は, 領域実習前に,実習に対して心配や不安,恐怖心を抱 いていることが多いこと,肯定的感情を抱いているこ とは少ないことがわかった.

考察

鹿大版CSQ の下位概念である脅威的感情とは,有 害な刺激がまだ存在せず,ただその到来を先ぶれ的に 示す手がかりがあるときになされる心配,恐怖,不安 などの感情である4).この感情を示す割合が高かった 理由として,COVID-19 感染拡大により,基礎実習に おける臨床経験がないことによる未知の体験に対する 不安が考えられる.加えて,SNS 上で収集した実習に 関する情報のマイナスイメージによる影響,および新 しいクラス編成による学生間での不安を共有できる関 係の希薄さが存在した可能性も考えられる.また,寺 田らは,ストレスが睡眠習慣・食習慣を含め生活習慣 全般の乱れを招き,その結果学習意欲・態度に影響が 及ぶ可能性があることを示しており5),脅威的感情が, 学習効果や意欲の低下,それに関連して提供するケア の質に影響を与えることが推測される

結論

A 看護専門学校看護学生は,臨地実習前に,実習に 対して心配や不安,恐怖心を抱いていることが多く, 肯定的感情を抱いていることは少なかった.この結果 から,効果的な学習効果向上のために実習前のストレ スを軽減する必要性があることが示唆された.

参考文献・引用

  1. 大村郁子ら:看護学生の抱える実習における困難・ 不安・ストレスに関する研究動向.日本看護学会 論文集看護教育,49;39-42,2019
  2. 五木田和江ら:看護学生のストレスに関する研究 の動向-日本における過去6 年間の文献検討-. 日本看護科学学会学術集会講演集,334,2006.
  3. 堤由美子:臨床実習用ストレス質問紙(CSQ)の 日本語版の開発.日本看護研究学会雑誌,17(4); 17-25,1994.
  4. 田辺幸子ら:領域別看護学実習における看護学生 の不安を評価する尺度の開発,日健医誌30(4); 395-406,2022.
  5. 寺田裕樹ら:看護学生におけるストレスによる学 習への影響.三重看護学誌,13;73-81,2011.

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