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2022年度 課題研究発表会
ポスター演題

食事摂取量低下をきたしている高齢心不全患者への食事摂取量増加へのアプローチ

キーワード:嗜好品心不全食への意欲高齢者
看護学科
岩本 未来

はじめに

高齢心不全患者の低栄養・身体活動低下は,サルコペニア・フレイルを促進する1)といわれている.今回,心不全は安定したものの,食事摂取不良で栄養低下をきたしている高齢患者を受け持った.食への意欲を重要視したことで,食事摂取量が増加したため,その要因について考察する.

事例紹介

A氏90歳代男性,心不全,後縦靭帯骨化症の既往あり,今回は心不全が悪化し入院した.入院当初は食欲があったが徐々に食事量が低下し,受け持ち時は数口食べるに減少していた.そのため低栄養状態となり,心不全は改善したにも関わらず退院できない状態だった.食事中は,食物が喉を通らないと訴え,腰痛のため5分程度ですぐの臥位になってしまい,食道炎を発症しさらに食事量が低下していた.食事療法として心不全食(1600kcal,塩分6g/日)と水分摂取量1lまでの指示であったが,食事摂取量は1~2割で水分も補液と経口摂取でやっと1l摂取できる程度だった.

看護の実際

逆流性食道炎に対し投与された粘膜保護剤の内服を確認し,食後すぐ臥位にならないため,腰痛予防も考慮しながらクッションを使用して安楽な体位で食事姿勢を保持できるよう心掛けた.また,普段から味の濃い食事を好むAさんの「味がしない」「喉を越さない」などの発言を尊重し,A氏の嗜好品を聴取したところ「唐揚げや焼き鳥が食べたい」と言われた.これらはカロリー・塩分の多い食品であるため看護師に相談し,医師から「好きな物を食べられるだけ食べてよい」という許可をもらうことができた.その後,家族から唐揚げ,焼き鳥,スイカが差し入れされ,おいしく食べることができた.その後も病院食は食べなかったが差し入れは継続して食べることでき,4日後に退院できた.

考察

A氏の食事量低下の原因は,腰痛と食道炎により食事姿勢が欲しできなかったことと病院食が口に合わないことだった.食道炎・腰痛に対しては内服薬と食事中・後の安楽な座位の保持,食事に関しては嗜好品を聴取した.家庭から食べていた嗜好品を家族から差し入れをしてもらうことで食事摂取量の増加となった.Aさんの嗜好品は塩分やカロリーが高く心不全の増悪や再燃の要因となってしまう.しかし,今回は食べたいとの食の意欲を優先した.光岡2)は慢性心不全患者の自己管理の継続には,患者が長い間かけて築いてきた信念や価値観を尊重し,患者一人ひとりにあった自己管理方法を考えて支援していくことが必要であるとしている.入院中は病院食ではなく,差し入れを優先して食べていたことから,Aさんにとって好きなものを食べたいという気持ち優先する事が退院へつながった.退院後の過剰摂取に気を付けながら心不全の悪化を早期に発見してもらうよう家族指導が必要となる.

結論

高齢期の心不全患者の食事は,食への意欲を重要視し,嗜好品を取り入れ,症状悪化に注意しながら食への楽しみや食事量の増加を図ることができることがわかった.

参考文献・引用

  1. 後藤葉一 : わが国の循環器医療提供体制の現状 と今後のあり方 退院後疾病管理における運 動・栄養介入の重要性 . 循環器専門医 , 28; 57- 66, 2019.
  2. 光岡明子ら : 後期高齢期にある NYHA I~II 度の慢性心不全患者の自己管理継続の要因 . 人 間看護学研究 , 17; 1-14, 2019.

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