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2022年度 課題研究発表会
ポスター演題

術後の倦怠感がある患者の離床を促すケアについての考察

キーワード:倦怠感術後離床
看護学科
西村 萌華

はじめに

周術期の消化器癌患者は,栄養障害や悪液質に よる筋力低下,さらに倦怠感が加わり身体活動量 に影響を及ぼしている可能性がある1 ).今回,倦 怠感の訴えが持続している術後の患者を受け持っ た.患者は,倦怠感により離床することに困難さ がみられた.そこで倦怠感に配慮した看護ケアの 実施,および休息の確保と活動時間の調整を行っ たことで,活動量が増加し離床の促進されたため, その要因について考察する.

事例紹介

A 氏,80歳代女性,膵頭部癌で膵頭部十二指腸 切除術チャイルド法を行い入院中,術後6日目で 学生受け持ちとなる.倦怠感の訴えが持続し,活 動量の低下がみられており,術後の離床が進んで いない.食事摂取量も少ないため点滴を行ってい る.また,夜間排尿にて不眠傾向であった.

看護の実際

A 氏は「しんどいです」「休みます」などの発 言があり,話しかけも手で払われることが何度か あった.そこで,事前に訪室の時間を伝えた.食 事量も低下し,筋力低下による下肢の脱力感と倦 怠感があったため病棟内歩行を計画し,必要性を 説明して食事前後など離床する機会に計画を実施 した.医師から歩行をすすめられたこともあり, 自主的に離床するようになった.また,下肢の血 行促進を期待して足浴 を行った結果,下肢の倦 怠感の訴えが減少した.倦怠感は午前中に強いと 訴えていたため,午前は休息の時間を確保し,午 後に看護ケアを行うようにした.患者は,次第に 倦怠感が軽減し,離床に対して意欲的になった. また,リハビリテーションの介入により,運動後 に倦怠感が消失したという A 氏の主観的評価と活 動性の向上がみられた.

考察

藤岡らは,「消化器癌患者の周術期理学療法は 退院後早期に身体活動量や運動機能が回復しにく い」2 )と述べている.A 氏の術後の倦怠感は,手 術の侵襲による運動機能低下の回復が完全ではな いことが考えられた.離床を促す際に,倦怠感に 配慮した休息の確保と活動時間の調整を行い,活 動をしやすい環境を整えたことで活動量が増加 し,離床が進んだと考える.また,リハビリの介 入により活動性の向上と運動後に倦怠感は軽減し たという患者の主観的評価が得られていることか ら,下肢の循環促進を目的とした足浴を取り入れ ながら病棟内歩行による運動を行ったことが,倦 怠感の軽減と,活動性の向上に影響を及ぼしたと 考えられる.

結論

活動性低下の予防には倦怠感への対処が重要で あり,術後の倦怠感のある患者に,倦怠感に配慮 した看護ケアの実施,および休息の確保と活動時 間の調整を行ったことで,活動量が増加し離床が 進んだ.

参考文献・引用

  1. 五十嵐仁他 : 周術期消化器がんの身体活動量 の推移 . 理学療法学 . 44(Suppl.2); P-YB-07-4, 2017.
  2. 藤岡真紀他 : がん患者における,倦怠感が活 動性に及ぼす影響と,リハビリテーションによ る影響−がん患者の倦怠感と活動性の関係につ いて . 理学療法学 . 39(Suppl.2); 0326, 2012.

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