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2022年度 課題研究発表会
口述演題

滋慶教育科学研究所 奨励賞

免荷及び足圧中心条件を加えたスクワット動作における膝関節伸展筋の筋活動特性

キーワード:スクワット動作免荷足圧中心
理学療法士学科
三島 雄生/黒川 海空斗/坂梨 佑斗/杉本 卓弥

はじめに

スクワット動作は下肢筋の筋力増加やバランス能力の向上の手段として有用である.一方で,運動機能の低下した高齢者には難易度の高い動作であり,スクワット動作を行う際には,支持物で安定性を保つ必要がある.しかし,支持物を用いてのスクワット動作は下肢の負荷が分散され,下肢筋の筋活動量は低下する1).スクワット動作の筋電図学的研究については多くの報告がみられ,池添ら2)は,スクワット動作を行う際,足圧中心位置を後方位にした際の大腿四頭筋の筋発揮量は著明に増加することを報告している.そこで本研究では支,持物を把持することによる下肢の負荷分散に対し,足圧中心条件を加えた際の,膝関節伸展筋における筋活動の特性を明らかにすることを目的とした.

対象および方法

<対象>本校在学中の学生で整形外科疾患の既往 のない健常成人20人

<方法>スクワットは支持物無し( 以下:A 群) で 足圧中心中間位( 以下: 方法1) と後方位( 以下: 方 法2) 支持,物有り( 以下:N 群) で足圧中心中間位 ( 以下: 方法3) と後方位( 以下: 方法4) の4種類を実 施した.

重心動揺計のグラフにてX ±20mm,Y ± 20mm の範囲を足圧中心中間位,X ±20mm, Y-40mm 以下の範囲を足圧中心後方位とした.ス クワット動作に要する時間は5秒間とし,膝関節 は屈曲60°とした.支持物は平行棒を用い, 両上肢 で手すりを把持する.平行棒高は大転子に設定し, 免荷量は被検者の体重から−15~−20kg の範囲 とした. 前方のコンピューターモニター画面にて 被検者に視認しながら実施した.筋活動量の測定 は,筋電図(ADINSTRUMENTS 社) を用いて行い, 各方法において内側広筋,外側広筋,大腿直筋の 積分値を求めた.

統計解析は改変R コマンダー4.1.2を使用 し,正規性の有無にて反復測定の分散分析又は Friedman の検定を実施し,各方法で求められた積分値の比較を行った.有意水準は5% 未満とし た.

結果

データを収集できた被検者は20名であった.統計解析の結果,内側広筋の方法1と方法2以外のすべての方法で有意差が認められた(方法2>方法1>方法4>方法3).

考察

両群ともに足圧中心中間位に比べ後方位で有意に高値を示した.要因として,後方荷重でのスクワットにより大腿四頭筋の筋活動が増加する事から3),膝関節屈曲モーメントが増大し被検筋への力学的要求が増大したためと考える.この結果より支持物有りでスクワットを実施する場合,足圧中心後方位にて実施すると,より筋力増強効果を得られる可能性が示唆される.

N群はA群に比べ有意に低値を示した.この結果より,N群はA群と同様の筋力増強効果が得られない可能性が示唆される.支持物有りでスクワットを行う場合は,頻度や回数を増やす,免荷量を軽減するなどの工夫が必要と考える.

内側広筋の方法1と方法2以外で,方法2>方法1>方法4>方法3の順に有意差を認めた.この結果より,4種類の方法が筋力増強トレーニングにおける段階的な負荷の設定方法として活用できるのではないかと考える.

参考文献・引用

  1. 金井秀作ら : テーブルを用いたスクワットに よるロコモーショントレーニングが筋活動に与 える影響. 人間と科学, 19(1); 49-53, 2019.
  2. 池添冬芽ら : スクワット肢位における足圧中 心位置の違いが下肢筋の筋活動に及ぼす影響. 理学療法学, 30(1); 8−13, 2003.
  3. 市橋則明編 : 運動療法学 障害別アプローチの 理論と実際. 第2版, 文光堂, 東京, 232, 2014.

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