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2022年度 課題研究発表会
口述演題

夜間せん妄をきたす患者のサーカディアンリズムを整える援助

キーワード:サーカディアンリズム夜間せん妄
看護学科
上野 真奈

はじめに

団塊の世代がピークを迎える2025年まで高齢者は増加している現状である.高齢者の入院は環境の変化から認知機能の低下が見られ,昼夜逆転や夜間せん妄を生じやすい環境にある.今回,日中傾眠傾向で夜間せん妄をきたし,睡眠覚醒リズムに変調をきたしている患者を受け持った.睡眠覚醒リズムの改善を目的にサーカディアンリズムを整えるための援助を実践したところ,夜間の睡眠時間が増加し,せん妄の減少がみられたため,その要因について考察する.

事例紹介

A氏80代男性,褥瘡,統合失調症のため入院中.発語は少なく,日常生活はほぼ全介助.日中傾眠傾向であり,夜間にせん妄を起こしてしまい,ベッドの下に降りてしまうことや,チューブ類を首に巻き付けてしまうなどの危険行動がみられる.夜間の睡眠時間も不十分であった.

看護の実際

A氏は,日中はベッド上で傾眠傾向であった.そこで,午前10~11時までの1時間と,午後2時~2時30分までの30分間に車椅子で日光を浴びることができる場所まで移動した.窓から外の景色を眺めるとともに,日光を身体に浴びることを意識しながら過ごし,日中の覚醒を促した.曇りの日も同様に行った.また,視覚から取り入れる外の景色に対して「緑がきれいですね,良い天気ですね」など声かけを行い,視覚と聴覚からの刺激を与えるよう心がけた.A氏はうなずいたり,嬉しそうな表情を見せた.この活動を毎日続けた結果,A氏の夜間の危険行動は減少し,夜間の睡眠時間の増加も見られた.

考察

遠藤は,サーカディアンリズムを整えるためには「起床後,太陽の光を浴び,体内時計のリズムがリセットされてから15~16時間後に眠気が出現すること」,また,「夜間のスムーズな睡眠を促すためには,セロトニンの分泌が重要」と述べている1).今回,毎日車椅子で日光浴を行ったことでサーカディアンリズムが整い,セロトニンの分泌が促進され,夜間の良好な睡眠形成につながり,せん妄も減少したと考える.また,外の景色を視覚と聴覚による刺激で認識を深めたことにより,日中の覚醒度が上昇し,サーカディアンリズム調整への相乗効果を与えたと推測される.ナイチンゲールは,「彼らがせめて空と日光をみることができること,それは回復のために何よりも重要だと言わないまでも,それに非常に近いものである」と述べている2).日光の下で外の景色を眺めたことは,サーカディアンリズムを整えながらA氏の健康回復に何らかの影響を及ぼしたのではないかと考える.

結論

日中傾眠傾向があり夜間せん妄をきたす患者に,サーカディアンリズムを整える目的で毎日日光浴を行ないながら視覚と聴覚からの刺激を与えたことにより,夜間の睡眠時間が増加し,夜間せん妄が減少した.

参考文献・引用

  1. 遠藤里紗他 : 認知機能低下患者の昼夜逆転予防 策の検討 日光浴を取り入れて. 日本看護会論文 集慢性期看護, 50; 186-189, 2020.
  2. フローレンス・ナイティンゲール(小玉香津 子ら訳): 看護覚え書 本当の看護とそうでない 看護. 日本看護協会出版社, 東京, 99-102, 2004.
  3. 川田明浩ら : 昼夜逆転している患者のサーカ ディアンリズム改善への試み. 全国自治体病 協誌, 53(5); 751-763, 2014.

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