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2018年度 課題研究発表会
ポスター演題

終末期の患者の看護 ~疼痛のある患者に対する精神的安楽に向けた看護の効果~

キーワード:タッチング疼痛終末期
看護学科
藤田 萌

はじめに

癌の終末期にある患者にとって疼痛が及ぼす苦痛はとても大きい。過去40年の痛みのデータをまとめた報告では全がん部位で53%、進行がんでは64%の患者で痛みを生じたとされており、痛みが強い場合は有意に不安が強く、より抑うつ的であったと報告されていると高橋らは言っている。1)癌のステージ4で生命予後3ヶ月と宣告された患者と関わった。その関わりの中で精神的安楽に向けた看護を行うことで表情・発言から少しでも疼痛緩和に繋がったと考えられた。この事例から疼痛に対して医療的ケアを行うだけでなく、患者の個別性に応じた関わり方で自分の手で行う看護や側にいることの大切さを感じ、さらに深く考えてみたいと思う。

対象と方法

診断名:膵頭部癌
既往歴:認知症
現病歴:心か部不快感、食欲不振あり安静および経過観察目的で入院
性格:自分の意思を持っている。明るい。社会的背景:美容師、夫と2人暮らし(子3人あり)

結果

A氏は普段から疼痛を訴えており、薬物療法により疼痛コントロールを行っていた。受け持ち4日目、訪室時、いつもより苦悶表情が強く、ベッド上に臥床されていた。その様子を目にし、かける言葉も見つからず、約30分間疼痛部位をさすっていると「気持ちがええわあ」という発言がきかれ、そのまま入眠された。また、毎日、日中は夫が面会に来られ一緒に過ごされており、3人で他愛のない会話をする時間も多く、その中でA氏の明るい性格から自然に笑わせて頂いていた。3人で笑いながら話をするなど気分転換になる時間を通して、表情から少しでも疼痛が軽減していると感じた。また、ある日、A氏の夫が「患者はこうやって看護師が部屋に来て笑ってくれるだけで元気が出る」と話された。

考察

高橋らは、薬物療法に加えて痛みの緩和技術を提供することも看護師の重要な役割であることや、「側にいること」が、患者が安らぎや安心感を提供していることが看護についてのいくつかの本で述べられていると言っている。1)疼痛部位をタッチングすることで、人の手の温もりや安心感から疼痛の緩和に繋がったと考えられる。また、笑いながら他愛のない話をするなど、誰かが側にいるということを実感したり、気分転換になるような時間を通して、少しでも精神的安楽をはかることで疼痛緩和に繋がったと考えられる。

まとめ

今回のA氏の事例を通して、特に終末期にある患者への看護では、医療的ケアだけでなく、タッチングや側にいることなど人と人との関わりが大切だとわかった。今後は、今回学んだことを忘れずに、忙しい中でも患者と向き合い寄り添っていきたい。

参考文献・引用

  1. 1)高橋美賀子、梅田恵、熊谷靖代ナースによるナースのためのがん患者のペインマネジメント新装版東京日本看護協会出版社2014

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