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2022年度 課題研究発表会
ポスター演題

重症心身障害児(者)における余暇活動の重要性について

キーワード:余暇活動重症心身障害
看護学科
古田 あかり

はじめに

重症心身障害児(者)は,障害が重いために幼少期は健康状態が不安定で長期入院や入退院を繰り返す状況におかれやすく,余暇活動の機会が非常に少ない.高等学校を卒業し,成人期に移行したあと在宅や施設での生活になり,遊びの機会は減り,患者にとって刺激がなく単調な生活になりやすい.今回,成人期にある重症心身障害者の方を受け持った.患者の生活の質を向上させるため,余暇活動として患者の強みにアプローチした遊びを計画し実施した.患者の生活にどのような影響を与えたのか考察する.

事例紹介

A氏,30代女性,未熟児出生による脳性麻痺,重症心身障害,知的障害,文字は一文字ずつ読めるが単語としての認知はない.二分脊椎による膀胱直腸障害,右上下肢麻痺,歩行困難,車いすに全介助で移乗し移動する.療育活動は週2回.その時間以外は一人でラジオを聞いていることが多く他者とのかかわりは少ない.発語は可能だが意思疎通が困難で自分の気持ちをうまく伝えられないと気分が沈みイライラしやすい.家族は県外在住で月に一回Zoomで連絡を取り合い入院生活の支えになっている.

看護の実際

入院中の気分転換不足を軽減することを目的として余暇活動を行った.料理の話が好きで,患者に好きなものをリクエストしてもらい,5種類の料理の写真を用意した.その写真を画用紙に貼り付けて一緒に献立をつくる計画をたてた.

A氏は近視のため近くが視えづらく,麻痺により手先の細かい作業が苦手なため,見えやすく掴みやすい手のひらサイズの料理の写真と大きな画用紙を用意した.A氏のペースで料理を選んでもらいながらのりで貼り献立を完成させた.好きな料理を選び貼っていくことで自分だけの献立ができ「おいしそう」といって笑顔を見せた.

考察

丸山らは,「仲間と心地よい時間を過ごすこと“楽しい”“面白い”と感じられる余暇活動をすること,思い出に残るような魅力的な経験をすること,それ自体が生活・人生の豊かさにつながる」と述べている1).倉田らは「個人の希望に叶った余暇活動は,その人らしく生きていく力をつけ,生活に広がりと深みをもたらしていく.そしてもてる力を発揮し,援助を受けながらも自己実現できる喜びを感じると同時に,その喜びを感じ取ってくれる人との関係が自己の存在を生み,生きる喜びにつながる」と述べている2).今回余暇活動として,料理の話が好きなA氏に対して,実際に作ることは難しいが,様々なメニューの中から自分で選び献立を作ったことで患者の笑顔を引き出すことができた.また,生活の中で少しでも好きなものに触れる時間があることで達成感や満足感を得ることができ,QOLの向上に繋がったと考える.

結論

患者の興味や関心など個々のニーズに応じた余暇活動は,その人らしく生活できることを支え,患者のQOLの向上につながる.

参考文献・引用

  1. 丸山啓史ら:発達保障ってなに?.全国障害者問題研究会出版部,東京,2-10,2012.
  2. 倉田慶子ら編:ケアの基本がわかる重症心身障害児の看護.へるす出版,東京,217,2016.

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