鳥取県中学生のサッカー競技における足部アーチ異常と 傷害の関連性について
はじめに
9〜13歳は技術習得に適したゴールデンエイジであ る一方,成長期のスパートによりスポーツ傷害の発生 が増加する重要な時期である.サッカーは下肢を使う競技であり,特に足関節や足部に傷害が多く,足部アー チとの関連性も指摘されている.従来の研究では小学生高学年を対象にしたが明確な結果が得られなかったため,本研究ではアーチ形成過程にある中学生を対 象に,足部アーチ異常と傷害の関連性を詳しく調査す る.
対象および方法
<対象>サッカークラブに在籍する中学1〜3年生68人.
方法
アーチ形状を評価する方法は舟状骨高及び足長からアーチ高率(以下AHR)を算出し指標とした. AHR の平均と標準偏差をもとに平均値+1標準偏差 以上をHigh 群,平均値±1標準偏差内をStandard 群, 平均値-1標準偏差以下をLow 群とし,対象者を3群に分け,それぞれの特徴をアンケート調査(怪我の有 無,overuse,利き足,BMI,年齢)にて回収し関係 について統計処理を行った. 怪我の定義は,サッカーによる怪我で長期間(1週間以上)練習を休むこととする.
結果
調査対象者は88名であった.そのうちアンケート回収件数は66件で,回収率は75% であった.すべての回収分が有効回答として集計された(有効件数:66 件).有効回答を基にした平均身長は163cm,平均体 重は51kg,平均年齢は14歳であった.調査期間中に報告された傷害件数は35件で,有効回答者68名のうち 55.8% が何らかの傷害を経験していた.傷害の内訳では,疼痛が最も多く15件で,全傷害の42.9%% を占めた.3群間における各項目での有意差は認めなかっ た. BMI,足部アーチ形態,および疼痛の有無に関する調査を実施した.その結果,BMI が「やせ」に 分類される群では,疼痛を有する者が20名と,疼痛を 有さない者を上回っていた.特に足部アーチ形態が Low である者に疼痛の訴えが多く見られた.具体的 には,Low アーチかつやせ群では疼痛を有する者が 18名,疼痛を有さない者が6名と,疼痛の有無に明確 な差が認められた.これらの結果から,BMI が低く, 足部アーチがLow 群ではスポーツ障害を生じやすい傾向があることが示唆された.オーバーユースを防ぐ ためには今後の追跡調査は必要になるかもしれない.
考察
本研究では,中学生サッカー選手66名を対象に足部 アーチ高(AHR)とスポーツ傷害の関連性を検討し たが,アーチ高群(High・Standard・Low)間において, 傷害発生率や疼痛の有無に有意差は認められなかっ た.山本ら1)は足部アーチ形態とスポーツ傷害との 関連については,従来からアーチ異常(扁平足やハイ アーチ)が足関節捻挫や足底腱膜炎などのリスク因子 になると報告されている.また,川村ら2)はアーチ高が低いことで足部の過回内が生じ,下腿や膝関節へ の負担が増すとの指摘もある.しかし,上田ら3)は静的なアーチ高と傷害発生率との間に明確な相関は ないとする報告もあり,本研究の結果もこれと一致す る.特に中学生期は足部構造が発達途上であり,成長 に伴う一時的な変化や個人差が大きいため,静的な舟状骨高のみでアーチ機能を評価するには限界がある. 本研究では静的AHR を用いたが,実際の競技では動 的なアーチ機能や筋力,姿勢制御などの要素が傷害リスクに影響している可能性がある.したがって,今後は動的アーチ評価や足部内在筋の機能測定,対象者の 層別化,さらには長期的な前向き研究を組み合わせることで,より精度の高い解析が必要である.
まとめ
足部アーチ高(AHR)と傷害の発生率や疼痛の有 無に有意な差は認められなかった.発育途上にある中学生期では,足部アーチが変化しやすく,筋機能や動的な支持機構も重要な因子であると考えられる.本研究は,成長期アスリートの傷害予 防の観点から,足部評価の在り方に再考を促すもので あり,今後の臨床的・教育的応用への基盤となることが期待される. 成長期の小・中学生ではアーチと怪我の明確な関連は見られず,対象数の拡大や環境要因を含めた更なる研究が必要である.
参考文献・引用
- 山本浩史,小山貴之他 :サッカー選手における足部形態とスポーツ傷害の関連性. 体力科学,64(6),775–783.
- 川村雅裕、渡辺英寿 :足部アーチ形状と膝関節運動の関係. 理学療法科学,28(4),517–523.
- 上田翔太、秋山志保 :高校サッカー選手における足部形態と傷害の関連性. スポーツ科学研究.





