フットゲージを用いた踵部脂肪体の簡易的な測定方法の試行 ― 教育・スポーツ現場における踵部障害の把握を目指して―
緒言
歩行時,踵接地の緩衝材として踵部脂肪体 (HFP)が機能する.運動機会の多い学校やスポー ツ現場では,過度な走り込みや外傷による踵部障 害が懸念されるが,現状,踵部の検査・測定には 専門的な機器を要すため,現場での実態把握は困 難と言える.これに対し,簡易的な踵部の測定方 法が提案できれば,踵部関連障害予防の一助とな り得る.本研究では,入手・操作が容易な器具を 用いて踵部を測定し,専門的な機器を用いた先行 研究と比較することで,測定方法の妥当性を検討 する.
対象と方法
1.対象 サッカークラブチームに所属する男子中学生88 名の利き足(ただし足部に疾患を有する者,手術 歴のある者を除外対象とする) 2.方法 身長・体重は身長体重計で測定してローレル指 数を算出し,やせ・標準・肥満に分類した.足長 はフットスケール,足幅・踵幅はフットゲージを 用いて測定した.踵幅( 足長の18% ) は荷重量で 最小踵幅・踵幅・最大踵幅に分類し,荷重時変化量・ 変化率を算出した.統計は改変Rコマンダー4.5.1 を使用し,正規性を確認した後,相関係数,分散 分析,多重比較検定を実施した.( α =0.05)
結果
被測定者の有効数は77名であった. 足幅と踵幅,荷重時変化量と最大踵幅,荷重 時変化率と最小踵幅,最小踵幅と最大踵幅に有 意な相関が見られた(r=0.59,r=0.49,r=-0.29, r=0.89).踵幅の荷重条件に有意な増加を認めた. 肥満度では最小・最大踵幅にて,やせ群と各群の 間に有意な増加を認めた.学年では最小踵幅にて 3年と各群の間に,最大踵幅にて1年と3年の間 に,有意な増加を認めた.また,学年と最小踵幅, 最大踵幅に相関が見られた(r=0.35,r=0.32).
考察
先行研究では,両脚立位での足幅と踵幅に中等 度の相関があり,HFP 厚は非荷重と50%荷重,荷 重で有意に増加することが報告されている1),2). 今回,同様の傾向を認めており,本研究における 踵幅の測定方法は適切であったと考えられる. HFP 厚は中学1年から高校3年にかけて有意 に増加し,体重,BMI と強く相関することが報告 されている3).本研究では学年,肥満度にて最小・ 最大踵幅の有意な増加が見られたが,踵骨幅の特 定が困難であるため,HFP 厚は測定できなかった. 一方,荷重時変化量に有意差は無く,先行研究の HFP 厚の荷重時変化量と近似することから,本 研究における荷重時変化量がHFP 厚の荷重時変 化量と同義であることが示唆された.さらに,相 関係数の検定より,最小踵幅は踵部・HFP の成 長度合いを,最大踵幅はHFP の柔軟性を,荷重 時変化量はHFP の衝撃吸収能を示し,踵部関連 障害に対するリスク指標試作のための有用な測定 項目となり得ることが示唆された.なお,今回は スポーツ障害に着目し,サッカークラブチームに 所属する中学生を対象としたため,一般中学生で 同様の測定をした際に異なる結果が得られる可能 性がある.今後,踵部障害や周辺症状に対するリ スク指標の試作や,他部位との関連性の疎明,踵 部に着目した研究の発展に寄与するため,対象者 を変更しながらサンプル数を増やしていく必要が ある.
参考文献・引用
- 中山 他.靴型設計時における成人女子用踵幅基準値表の試作.靴の医学27(2),p.25-29,(2013)
- 前道俊宏:超音波法を用いた踵部脂肪体の機 能解剖学的特性の解明.早稲田大学審査学位 論文 博士( スポーツ学科) p.1-119,(2021)
- 阿久澤 他.踵部脂肪体の成長に伴う変化と 厚さに影響を与える身体因子.日足学会誌 (J.Jpn.Soc.Surg.Foot) 35(1),p.96-98,(2014)





