作業療法士養成校における遠隔指導の学習効果の検証 -対面指導と同等の効果を得る授業環境の検討-
はじめに
日本のリハビリテーションにおいて2025年改訂版心不全診療ガイドラインで遠隔リハビリテーションが取り上げられるなど,遠隔形式のリハビリテーションの活用が注目されている.作業療法士養成校においてもコロナ禍から継続し,遠隔授業の形態で実施している教科も存在する.服部ら1)は医療系学生への遠隔形式の実技系授業は,対面形式の授業と比べて学習効果を得られにくいと述べている.本研究はzoom を活用した遠隔形式の授業環境を工夫することで対面形式の授業と同等の課題の習熟度や理解度,満足度を得ることができるか明らかにすることである.
対象・方法
脳卒中後の運動機能の回復を評価する検査としてBrunnstrom Recovery Stage(以下BRS)を習熟課題に設定した.対象は本校在校生で,研究に同意を得られた25名を3群に分類した.各群の条件をA 群は対面形式で授業資料の配布を行う群,B 群とC 群は遠隔形式でB 群は授業資料の配布を行わない群,C 群は授業資料の配布を行う群と設定した.方法は各群共通して①授業スライドで講義,②課題の動作観察,③テストで習熟度を評価,④アンケート紙で理解度,満足度を調査した.統計解析は,Kruskal-Wallis 検定とSteel-Dwass 法を用いて3群間の平均値の比較を行った.有意水準は5% 未満とした.
結果
習熟度は3群間の有意差は認めなかった.理解度はA 群:9.2±1.0点,B 群:5.5±1.8点,C 群:6.7±1.6点を記録しA-B 群間に強い有意差(P<0.01),A-C 群間に有意差(P <0.05)を認めた.満足度はA 群:9.2±0.9点,B 群:5.9±2.0点とA-B 群間に有意差(P<0.05)を認めた. またアンケート結果よりA 群では「実際に体験しながら理解できた」,B ・C 群では「動作が見えにくい」といった意見が挙がった.
考察
本研究では遠隔形式の実技指導において多方向からの課題動作の観察と授業資料の配布,スライドの説明を行うことで対面形式の実技指導と同等の習熟度や理解度,満足度を得ることができるか検証した.その結果,習熟度において遠隔形式の実技指導は対面形式の実技指導と比較し同等の効果を得られる可能性が示唆された.しかし主観的な理解度・満足度において,対面形式での実技指導の有効性が示唆される結果となった.
野本ら2)は,遠隔形式で学習する際は資料の見やすさの工夫や手技の実践場面をいくつかの方向からカメラで写すなど分かりやすさへの工夫が必要であると述べている.本研究は資料の見やすさの工夫として授業資料の配布の有無としたため,遠隔形式に配慮した授業スライドの見やすさの工夫は行っていない. またアンケート結果より遠隔形式で多方向から課題動作を提示する際の視認性の課題が示唆された.そのため遠隔形式での実技指導では学習者が能動的に課題の動作をイメージできるように,視認性に配慮した授業スライドの準備や環境の設定を行う必要性があると考える.
このことは学習者自身が課題に対しての意味づけや手順の理解を深めて,主観的な満足度や理解度の向上に繋がると考える.
参考文献・引用
- 服部辰広ら:対面授業と比較した遠隔授業の学習効果に関する研究−保健医療学部整復医 療学科学生に対するアンケート調査より- . 日本体育大学紀要51;1001−1009,2022.
- 野本義則ら:オンライン授業実施に際する留意点 作業療法士養成校学生を対象としたフォーカス・グループ・インタビューから. 東京医療学院大学紀要12; 1−10,2024.





