地域在住高齢者におけるフレイルとペットボトル開栓動作における握力とピンチ力との関連性について
はじめに
地域在住高齢者の中には、日常生活の中でペットボトルの開栓を困難と感じる者が少なくない。その背景として、握力のみでは説明できない手指機能の低下や、フレイルとの関連が考えられる。本研究では、特に手指の巧緻性に関わるピンチ力に着目し、ペットボトル開栓動作とフレイルとの関係を明らかにすることを目的とした。また、握力は全身筋力の代替指標として広く用いられ、高齢者の筋量や身体機能を把握するうえで有用である。一方、ピンチ力は日常生活における細かな操作性や器用さに関連し、高齢者が自立した生活を送るうえで不可欠な能力であるにもかかわらず、フレイルとピンチ力に焦点を当てた研究は少ない。本研究により、握力とピンチ力の双方を測定することは、フレイルや身体機能低下の早期発見に寄与すると考えられる。
対象および方法
〈対象〉地域在住の65 歳以上の高齢者65 名
〈方法〉本研究では、対象者65 名に本研究の目的や手順等を十分に説明し同意を得た。
①基本チェックリスト25 への回答を依頼した。
②ペットボトルの開栓動作を観察・撮影し、握力およびピンチ力を測定した。
③ペットボトルの開栓方法により群分けを行い、その結果とピンチ力との相関について検定を実施。
結果
モデルカイ二乗検定により、本モデルは有意であり、(x²(3)=11.08,p=0.01)、本モデルは目的変数を有意に説明することが示された。各説明変数についてフレイルはオッズ比3.197(95% 信頼区間、p 値=0.063、VIF=1.06)、開栓側ピンチ力はオッズ比1.190(95% 信頼区間、p 値0.017、VIF=2.43)、開栓側握力はオッズ比0.9(95% 信頼区間、p 値=0.063、VIF=2.42) であった。Hosmer-Lemeshow適合度検定の結果、p=0.92 となり、本モデルは十分に適合していることが確認された。
考察
本研究では、地域在住高齢者におけるペットボトル開栓動作と筋力、ピンチ力およびフレイルとの関係を検討した。その結果、ピンチ力とフレイルには有意な関連が認められた。先行研究では、握力の低下がADL、IADL の低下と関連する1)ことが報告されており、上肢筋力の低下がQOLの低下につながる可能性が指摘されている。また、ペットボトルの開け方(逆筒握り)が全身筋力低下のサインとなる可能性が示されている2)。その結果、開栓動作が全身筋力低下の早期指標として活用できることが示唆されている。以上を踏まえ、ピンチ力とフレイルが関連する可能性があり、ペットボトル開栓動作を用いたピンチ力評価は、地域在住高齢者のフレイルの早期発見に有用な指標となり得ると考える。
おわりに
本研究にはいくつかの課題が存在する。まず、対象者が通いの場やフレイル予防教室に参加することのできる健康意識の高い地域在住高齢者に限られていたため、その他の高齢者集団全体への結果の一般化には注意が必要である。次に、地域差の影響を十分に考慮できていない点も課題として挙げられる。地域によって生活習慣や身体活動量が異なる可能性があり、今回の結果が他の地域に当てはまるかは不明である。さらに、本研究は横断研究であるため、ピンチ力とフレイルとの関連は確認できたものの、因果関係を明らかにすることはできない。今後は、より多様な対象者を含めた多施設縦断研究などにより、因果関係の解明や地域差の影響を評価することが課題である。
参考文献・引用
- 入院高齢者における握力および筋肉量と日常 生活動作(ADL)- 手段的日常生活動作(IADL) の 依存との関連 - EMPOWER 研究 Meskers,C. G.Met al,p232-238, (2019)
- 「白土大成ら:地域在住高齢者におけるペットボトル開栓時のキャップ把持パターンと筋力低下の関連性」臨時増刊号(60 号),p177,2023





