看護学生の延命治療に対する価値観を 終末期実習はどのように変容させたのか
はじめに
近年,医療・福祉施設での死が8割を超える1 )中で,延命治療に関する意思決定は重要である.A 専門学校看護学科では,3年次に終末期実習があり,死が間近な患者へのケアや看取りを体験する.この実習が学生にどのような影響を与えているかは明らかになっていない.今回は終末期実習が与える,延命治療での看護や死生観の変化を明らかにしようと考えた.
対象および方法
A 専門学校看護学科3年生で,終末期実習を経験した学生と未経験の学生を対象に,延命治療や終末期患者への関わりについて,チェックリスト形式と自由記述のアンケート調査を実施した.
結果
回答者は終末期実習経験者が15人,未経験者が6人である.5段階の質問の結果,実習経験の有無によって延命治療に対する意識の差がみられた.実習経験者は「延命治療を望まない患者の意思を最優先すべき」と考え「DNR(注)指示は尊重されるべき」との回答が多い.患者の意思による限定的な延命治療を尊重する傾向である.自由記述では実習経験者の方が回答の幅が広く,多様な考え方がみられた.一方未経験者は「延命治療はなるべく行うべき」とする回答が多い.両群で共通した結果は「自分の家族が終末期であれば延命治療をしてほしい」では意見が分散した.さらに「終末期でも医療の力で生命を維持するべき」では両群とも少数である.さらに,「苦痛を和らげるケアが重要」「ACPの重要性を理解している」については両群とも肯定的な回答が多数で,終末期ケアの本質的役割に対する理解が高いことが示唆された.
考察
実習を経験した群は「延命治療を望まない患者の意思を最優先すべき」と捉え,DNR 指示についても肯定的であったのは,患者や家族と関わり,患者家族の意思を実感したためと考えられる.また自由記述からも,患者・家族にとって「残された時間」を尊重する,終末期看護の意義を体感したとも考えられる.一方,未経験者は「延命治療はなるべく行うべき」とする意見が多く,可能な限り生きるということを重視する姿勢が見られた.これは,終末期患者と関わっていないことで,延命に対する理想的な捉え方が可能性としてある.玉井らが「終末期ケアに関する教育は知識,技術を習得するだけでなく終末期ケアの捉え方が肯定的に変化し,ケアへ価値を見出すことにつながった」2)と述べているように、終末期実習は,学生の価値観に直接的な影響を与え,より現実的かつ倫理的な視点を育む,重要な学習機会であると考えられる.
結論
終末期実習が延命治療や終末期患者への関わり方に影響を与え,多様な視点と看護観は,患者・家族に寄り添った看護実践につながると考える.(注)DNR とは患者が心肺停止になった際「心肺蘇生を行わない」と医療方針を示すことである.
参考文献・引用
- 統計でみる日本.人口動態調査 人口動態統計確定死亡.脂肪の場所別にみた年次別死亡数・百分率
- 玉井なおみら:終末期看護教育がもたらす看 護学生の終末期ケアに対する意識の変化.名桜大学紀要,(23):10,2018.
- 田中久美子ら:緩和ケア病棟実習を経験した 看護大学生の死生観に関する研究,1;11





