地域住民のICT 利用の実態の調査について
はじめに
医療分野におけるICT 化とは, 医療従事者と患者の双方がデジタル技術を活用して, 情報を共有し合い, 医療の質と効率を向上させる取り組みのことをいう1). ICT 化により医療現場が抱えている人員不足や, 現場の業務負担増加など様々な問題の解消に繋がるといわれている. しかし,ICT を利活用をしている高齢者は少ないという実態調査があり2)医療を必要とする高齢者にとってICT の導入は実際に便利なのだろうか. 本研究では, アンケート調査を行い, 地域住民のICT 利用状況を把握し, ニーズや課題を検証することによって,今後のICT よる医療サービスへの期待や向き合い方を考えていく.
対象および方法
鳥取駅周辺にて60歳以上を対象にインタビュー方式でアンケートを実施し,48名にアンケートを行った. そのうち質問項目に未記入等が認められた3名を除いた45名(男性19名、女性26名)を研究対象とした. 統計解析はHAD18on008を使用した.
結果
アンケートは4件法で回答を求めた. 回答には「まったくそう思わない」1点~「とてもそう思う」4点と得点化した.
アンケート10項目について, 探索的因子分析(最尤法, プロマックス回転)を行い,2因子が抽出され, 第1因子は「ICT 機能性」と命名し, 第2因子は「ICT サービス」と命名した. 因子間相関は.71であった. また各因子の信頼性係数αは「ICT サービス」α =.83,「ICT 機能性」α =.88であり, 十分な内的整合性が認められた.
性別・年代の差がどのように影響しているかを検討するために分散分析を行った. その結果,性別×サービスの主効果が有意であった. 多重比較により, 男女による差を認めた. 性別×機能性は主効果は有意ではなかった. 年代×サービスは主効果は有意であったが, 多重比較により, 年代の差は認められなかった. 年代×機能性は主効果が有意であった. 多重比較では60代と80代,70代と80代との間に有意な差を認めた.
考察
因子分析により,「ICT サービス」と「ICT 機能性」の2因子を抽出し, この2因子に対して性別や年代の差がどのように影響しているかを検討した. その結果,ICT 機能性においては80代と比較して60代,70代の方が機能的に満足していたことが分かった. これはICT を使用するにあたり, 年齢を重ねるとスマートフォンや機器を使用することに対して難渋することが示唆された. しかし, タブレットやキャッシュレス決済等を使用する高齢者も増えつつあり, 機能的な面でのニーズも高くなってくることが予想されるため, 今後の高齢者のICT 利用促進に繋がる研修も取り入れていく必要があるのではないかと考える. それをふまえ,高齢者も含めたすべての世代がICT を利用することにより, 医療業務の効率が向上し, 患者にも職員にも有益になることを期待したい.
参考文献・引用
- 厚生労働省,医療分野の情報化の推進について https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/index.html
- 総務省, 高齢者のユーザビリティに配慮したICT 利活用環境に関する調査研究