不登校の子どもを持つ保護者が子育てに感じている悩みに作業療法士がアプローチしていく必要性についての検討
はじめに
文部科学省によると2023年,小中学校における不登校児童生徒数が約30万人になったと報告されている.作業療法士として不登校児へのかかわりは増えてきているが,保護者の方への関わりはまだ少ない.不登校の子どもを持つ親は,孤立感と疎外感からストレスを感じ,鬱になる保護者も少なくないと考える.
今回の研究では,不登校児を抱える保護者の悩みを聞き,作業療法士として保護者の悩みに介入していく必要性があるのか,また,作業療法を必要としているのか検討していく.
対象および方法
〈対象〉A 高等学校,鳥取市内A フリースクールに通う子どもの保護者
〈方法〉①選択式アンケートで保護者の方が抱えている問題について調べる②作業療法・作業療法士を知っているか質問,また,作業療法・作業療法士について説明を実施し,説明を聞いたうえで,現在抱えている悩みに対し,作業療法を必要と感じているかアンケートを実施する③また,悩みについて自由回答できるよう自由記述欄を設ける.上記のアンケートは紙面上で実施し,アンケート結果から考察を行う.今回は,A 高等学校,鳥取市内A フリースクール合わせ,計33名の保護者から回答を得ることができたため,以下に報告する.
結果
アンケート結果として,9割弱の方が,現在抱えている悩みに対し,作業療法が必要だと感じると回答された.反対に1割の方が必要ないと回答された.その理由として,「現在は子どもが不登校ではないため必要ない」「親子関係,学校とのやり取りでどうにかなったため」「作業が心のケアにつながると思えない」「結局は自分の選んだことを信じて進むしかないから」という意見があった.
現在の悩みとして,子どもの学習面や将来に対する不安などが多く挙げられていた.また,「仕事と子育ての両立に対する困難さ」「学校など周囲との関わり方がわからない」といった,保護者自身の悩みも挙げられていた.
子どもが不登校になったことで増えた負担として,「精神的負担」39%,「経済的負担」34%,「身体的負担」24%,「特になし」3%となった.
考察
研究の結果から, 不登校の子どもを持つ保護者は,作業療法を必要とする方が多いとわかった.しかし,1割の方が,作業療法が必要ないと回答されたことから,必ずしも作業療法士が介入する必要性はなく,医療機関や学校から紹介された時などに介入する必要があると考える.不登校を持つ保護者の方のサポートの選択肢の1つとして,作業療法を提供できたらよいのではないかと考察する.
また,その他現在の悩みについて聞いたところ,訪問でのカウンセリングの導入や子どもから就労までの何らかの継続的な支援などが必要ではないかという意見が挙げられた.そのため,家から出られない子どもに対して,訪問作業療法を実施したり,不登校経験のある子どもの就労支援として,作業療法を実施するなども,今後,検討していく必要があると考える.
また,不登校になったことで増えた負担として,精神的負担に次いで経済的負担が多かったことから,不登校に伴いどのような経済的負担が生じるのか,今後,考察していきたい.
参考文献・引用
- 白井祐浩(2023):フローチャートによる不登校の分類とその対応. 志學館大学人間関係学研究紀要2023vol44