要支援・要介護者の外出頻度と環境因子との関連について
はじめに
近年は少子高齢化に伴い, 要介護高齢者が増加傾向にある. 高齢者の日常生活動作能力維持の為には,日常生活のおける活動性, 特に屋外までの外出は有益であり, 要介護高齢者では, 個人の日常生活動作能力よりも環境要因が外出頻度低下に関連することが示唆されている. しかし高齢者の外出頻度に関連する環境因子について詳細に研究した報告は少ない. 本研究では地域在住高齢者に対し, 現状よりさらに外出を望む際に, その外出を阻害している因子を調査するとともに外出が促進される要因を推測する.
対象と方法
1)対象:鳥取市内のデイケア(1施設)を利用されている高齢者23名. 要支援・要介護1,2で移動が可能,本研究の主旨に同意した者とした.
2)アンケート調査:項目は, ①性別②年齢③主な疾患④介護度⑤家族構成⑥住宅形態⑦介護保険サービス利用及び頻度⑧移動動作⑨外出状況⑩外出目的⑪外出支援サービスについて⑫現状以上に外出をしたいかとした.
3)上記アンケートの⑬にて外出したいと答えた場合別紙アンケートを行った. ①近隣にお店がない②公共交通機関を利用するバス停, 駅等が近隣にない③家の周辺環境(道路等)が悪い④外出する目的がない⑤一緒に外出する人がいない⑥その他(聞き取り) にてできない理由を複数回答にて収集した.
4)分析:名義尺度を人的要因, 物的要因とし, 検定にはフィッシャーの正確確立検定を用いた. 外出頻度が多い郡を週4~7日の外出, 外出頻度が少ない郡を週1~3日以下の外出とし, それに加え物的要因(別紙①②③⑥)と人的要因(別紙④⑤⑥)を設け, 外出が多い群, 少ない群それぞれグループ化し合計4群を比較する.
結果
アンケートには23名(男性:12名、女性:11名)から回答が得られた. その中で物的, 人的要因が関係していた者は8名であり, 外出頻度週4~7日4名,週1~3日以下4名であった. 外出頻度が多い群での人的要因1名物的要因3名であった. 外出頻度が少ない群での人的要因4名物的要因0名であった. また現状以上に外出をしたいと答え, 別紙アンケートに回答した方は10名で別紙項目①4件②2件③2件④2件⑤1件⑥6件(車が使えない, 目的地までが遠い, 身体状況が不安定, 疲れやすい, 目的が旅行・山登りなど現実的でない)であった. 外出状況と人的・物的要因の分析はフィッシャー正確確立検定を用いて検定し, 人的・物的要因(p=0.05>0.143)と有意差はみられなかった.
考察
調査対象者は人的・物的要因が関係している者8名を選定し外出頻度の有無との関連を調査した.8名の中で週4~7日の外出4名, 週1~3日以下の外出4名となった. 統計結果から外出頻度と人的・物的要因との有意差はみられなかった. 外出が多い群では, アンケート結果より物的要因による制限であり,家族や友人との外出は保たれている為, 対象者の住む地域環境が外出に制限を与えていると考えられる. 外出頻度が少ない群では, アンケート結果から人的要因による制限であり, 外出時の同行者の有無が外出に制限を与えていると考えられる. 今回の研究では条件に当てはまる対象者が少なく, 結果の偏りが生じている可能性がある. その為, 対象施設や人数を増やすこと, アンケート内容における定義の明確化を行う必要があると考えた.
参考文献・引用
- 河野あゆみ, 金川克子:地域虚弱高齢者の1年間 の自立度変化とその関連因子, 日本公衆衛生雑誌. 2000,47(6):508-516
- 村永吾:「高齢者の運動機能と理学療法」PT ジャーナル .2009.10
- 原崇男ら:高齢者の外出頻度と交通行動の地域 特性に関する一考察