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2024年度 課題研究発表会
ポスター演題

疼痛によりADL が低下している高齢者の ADL 改善への取り組み

キーワード:疼痛疼痛緩和高齢者
看護学科
山口 裕矢

はじめに

平成22年度厚生労働省国民生活基礎調査における要介護者等の状況では, 要支援者では介護が必要となった原因は「関節疾患」が19.4%と最も多い結果であったと報告されている. 関節疾患には頻度の高い自覚症状として腰痛や肩こりをはじめとする運動器疾患が背景となり, 慢性疼痛を伴うため, 高齢者の生活の質を著しく低下させる1). 今回, 腰部脊柱管狭窄症による慢性疼痛により日常生活動作(以下ADL)が低下している患者を受け持った. 疼痛緩和を行い離床を促した結果,ADL の改善が見られたため, その要因について考察する.

 

事例紹介

A 氏80代, 女性, 腰部脊柱管狭窄症
現病歴:5年程前〜腰痛あり増悪, 整形外科受診現在の状態:左腰部から下肢にかけて疼痛がありADL 低下によりベッド上臥床生活となる.

 

看護の実際

A 氏の健康状態を確認し, 疼痛についての部位と強さをNRS(Numerical Rating Scale)で確認した. 次にA 氏が用意した市販の温熱用あずきまくらを電子レンジで加熱(45~50℃)し, 疼痛部位を温めた.20分程度温めた後ギャッジUP により活動を促し, その時の疼痛の部位・強さをNRS で確認した. ここで言う「活動」とはA 氏の趣味である書道とした. 温罨法前のNRS は7で, 左腰部から左下肢まで痺れるような疼痛があり, ギャッジUP30°で増強したが, 温罨法実施後はNRS3〜4となり, 疼痛範囲も左膝関節〜足趾に縮小し, ギャッジUP60°まで可能となった. 以上を1日合計2回実施した.A 氏の反応としては「これええな」「気持ちええわ」という発言があり, 表情が和らぎリラックスしている様子が見られた.

 

考察

細野は,「疼痛は活動制限に大きな影響を及ぼすものと考えられ, 疼痛の改善は高齢者のADLおよびIADL の向上につながることが示唆された」と述べている2). 今回温罨法の実施により, 疼痛が緩和されADL の改善が見られたことから,温熱療法が疼痛緩和に有効であることが確認できた. その結果,ADL の拡大を図ることができたと考える. また, 患者の反応から単に疼痛を緩和するだけでなく, 心理的なリラクゼーション効果も期待できたと考える. さらに, 心理的効果は, 疼痛緩和に加えて患者のQOL を向上させる意欲をもたらす要因となったことも考えられる. 今後のケアにおいては, 慢性疼痛を抱える高齢者に対して,温罨法のような非侵襲的な疼痛緩和アプローチを積極的に導入することが, 身体的な機能改善だけでなく, 心理的な安定や社会的活動の促進にもつながると考える.

 

結論

慢性的な疼痛により著しくADL が低下していた患者に行った温罨法を用いた疼痛緩和は,ADL改善に効果的であったことが確認された.

参考文献・引用

  1. 野村佳香:高齢者も運動器疾患における慢性疼痛看護の現況と看護実践の質に関する調査研究,日本運動器看護学会誌2016年11巻p.37−45
  2. 細野恵子他:膝関節痛にある高齢者への温罨法による疼痛緩和の効果,名寄市立大学紀要 第5巻,4,2011.

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