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2024年度 課題研究発表会
ポスター演題

夜間不眠のある患者のサーカディアンリズムを整える援助

キーワード:サーカディアンリズム夜間不眠
看護学科
金城 麟

はじめに

サーカディアンリズムは, 日光による刺激のほか, 食事・仕事など社会生活を営むうえでの刺激にも影響を受け,1日24時間の生活リズムにセットされている. しかし, 加齢に伴う入眠困難, 中途覚醒の増加で効果的に高齢者は質の良い睡眠をとることが難しくなる. さらに, 日中に, 楽しみや趣味がないと長い午寝をとってしまい, なかなか寝付けず社会的刺激による悪循環を及ぼすことが懸念されている1). 今回, 夜間不眠傾向のある患者に対して, 日中活動を促すことで, 退院後生活を見据えた生活リズムの再構築目的に援助を行った. また, サーカディアンリズムを整えることにより,患者の健康状態や生活の質の改善が図れたので,その要因を考察する.

 

事例紹介

A 氏60歳代後半男性, 膵臓に腫瘍が見つかり, 腹腔鏡下膵体尾部切除術を行うために入院. 手術や術後の確定診断が出るまでの腫瘍に対する不安感が強かった. 責任感が強い性格で, 入院により家族や職場の方に迷惑をかけているという思いもあり夜間不眠傾向だった. このため, 日中も傾眠傾向で, 昼夜の生活リズムに変調をきたしていた. しかし, 退院後は仕事復帰を望んでおり, 日中はしっかり活動できるよう, 生活リズムを整える必要があった.

 

看護の実際

A 氏の退院後の目標は職場復帰であった. だが,夜間不眠のため日中はベッド上で傾眠傾向であった. そこで, 仕事の時間である日中に活動ができるように, 午前9時に日光を浴びることを目的に休憩をとりながら30分の歩行練習,10時からデイルームに移動し, 趣味である謎解きの本と脳トレの本を使用し, 実施してもらい覚醒を促した. 午後も同じように13時30分から歩行練習を行い, 休憩後デイルームで本を使用し, 脳に刺激を与えることを意識した活動を行った. 最初A 氏は,「疲れた」と発言があり, 休憩をとりながら行なった. しかし,このスケジュールを毎日続けた結果,A 氏が自ら活動するようになり, 日に日に活動時間も増えていった. また, 夜間の不眠も減少し, 日中の傾眠がほとんどみられなくなった.

 

考察

ナイチンゲールは,「彼に他に何もみせることができなくても, 彼らがせめて空と日光を見ることができること, それは回復のために何よりも重要なことだとは言わないまでも, それに非常に近いものであると私は断言する」2)と述べている. 歩行練習時にただ歩くのではなく太陽の光を浴びながら行うことは, サーカディアンリズムを整え健康回復に繋がっていったと考える.
また, 田中は,「高齢者の睡眠改善には, 生活リズムの調整, 活動のメリハリが重要である」3)のと述べている. 毎日同じ時間に活動を続けていくことで習慣化し,A 氏が自らその時間に体を動かすようになったことで夜間の睡眠もしっかり取れ, 日中の傾眠傾向が改善されたと考える.

 

結論

夜間不眠の影響で日中傾眠傾向をきたす患者に, 退院後の生活を考え, 日中の覚醒を促す目的で,毎日, 決まった時間に身体活動や精神活動を行った. 身体と脳に継続的に刺激を与えたことでサーカディアンリズムが整い, 自ら活動に取り組むことができるようになった. その結果, 夜間の不眠と日中の傾眠傾向が改善された.

参考文献・引用

  1. 正木治恵他:老年看護学概論.「老いを生きる」 を支えることとは, 看護学テキストNiCE,98-101
  2. フローレンス・ナイチンゲール: 看護覚え書 本当の看護とそうでない看護. 日本看護協会出版社, 東京,99-102,2004.
  3. 田中秀樹他:高齢者の睡眠とヘルスプロモーション-快眠とストレス緩和のまでの習慣づくり-. ストレス科学研究10-12,2014.

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