当院における透析時運動指導等加算の算定にむけた取り組み
はじめに
近年,慢性腎臓病や血液透析患者の日常生活動作能力を維持する方策として,腎臓リハビリテーションが注目1)されている.特に透析中運動療法は医療者監視のもと安全に実施でき,透析時間の有効利用の観点からも推奨されている.当院では2015年から透析中運動を臨床工学技士を中心としたボランティアで開始したが,2022年に「透析時運動指導等加算」が新設され,新たに多職種での運営方法の構築が必要となった.
目的
今回我々は,透析時運動指導等加算の算定に向け多職種間で協議し体系化を試みた.その過程で確認された課題とその対策を取り入れた加算時の手順について紹介する.
方法
透析に携わるスタッフ40名を対象に,透析時運動に関するアンケート(透析時運動に効果はあると思うか?目標の共通認識はできているか?などの質問)を実施.その結果を参考に透析時運動指導等加算の手順を作成した.
結果
対象の半数が透析時運動の効果や目標の共通認識が不十分であると回答していた.以上のことから当院における透析時運動指導では,腎臓リハビリテーション(腎リハ)ガイドライン講習会修了看護師と腎リハ指導士による運動指導計画書の作成(透析・禁忌の内容,運動初期評価・目標設定などの記載)後,どのスタッフが担当しても感覚的に運動の目標が認識できるよう,個々の症例に目標カードを作成すると共に3か月毎に定期評価し,カンファレンスにて効果判定を報告することとした.
考察
運動指導計画書や目標カードの作成により患者の問題点や目標を多職種で共有することが可能となった.この多職種で個々の患者の運動する目標を共通認識する取り組みは,運動習慣の促進因子である「対人関係」や「自己の向上」2)に繋がるため,患者の運動の継続に寄与すると共に,運動指導が専門外である透析スタッフのモチベーションの維持に有効であると考えられる.しかし多職種で関わるが故に加算の取り組みに対する責任の所存が曖昧になること,対象の選定や人数調整などコーディネートする人材が不在であるなどの課題が生じた.今後は透析室内において運動指導をコーディネートする人材の設置が円滑な運営には必要であると考えられた.
結論
透析時運動指導等加算のシステムの運営や透析患者に対して多職種で介入する場合は透析室に運動指導コーディネーターを設置する必要がある.
参考文献・引用
- 上月正博編著.腎臓リハビリテーション第2版.東京:医療薬出版.2018.
- 石井香織, 井上茂, 大谷由美子 他:簡易版運動習慣の促進要因・阻害要因尺度の開発:体力科学,58,507-516,2009.