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2024年度 課題研究発表会
口述演題

HOPE:痛みをコントロールし家族と最期まで過ごしたい

キーワード:ADLQOL呼吸困難疼痛
作業療法士学科理学療法士学科看護学科
相見 圭祐(看)/姥 奏帆(看)/岡田 真実(看)/石淵 奨汰(理)/加藤 美咲(作)

はじめに

今回,多職種連携授業を通して,右肺腺がん患者の退院支援・調整についてグループワークを行った. 患者のHOPE:「痛みをコントロールし家族と最期まで過ごしたい」を目標に挙げ, そのために痛みや呼吸困難, 食欲低下, 倦怠感がある中,最期まで生活の質(以下QOL)の向上に焦点をあて考察を行った.

 

症例紹介

A さん 右肺腺がん 55歳 女性 (Stage Ⅲ B:T3N2M1)
約2年前に右肺腺がんの診断を受け,原発巣の腫瘍のみ摘出した. その後も抗がん剤治療のため入退院を繰り返したが, 今年5月に右頚部痛が出現し,第4・5頚椎の骨転移と右無気肺と診断された. がん治療に対しては放射線治療と薬剤による疼痛コントロールを行っていた. 医師より今後の見通しについては,「抗がん剤治療の期待はできない. 呼吸状態が悪化しているのでできるだけ早めに退院し, ご家族で一緒に過ごした方が良いのではないか」と説明を受けている.

 

在宅退院に向けた課題

腫瘍が気管支を圧迫し,肺に空気が入りにくい状態により呼吸困難の症状がみられる. 在宅退院後にできる限り自立した生活を送るためには,疼痛管理や ADL 能力の改善が必要不可欠となる. 在宅酸素療法も継続するため,在宅酸素管理指導も必要である. また,介助が必要な動作に関しては同居家族の介護負担を減らした方法を指導する必要がある. 夜間訪室時に泣いていることがあるため,孤独感や不安感などを抱えていると推測され,精神的フォローも必要不可欠である. 死への不安の軽減としては, 傍にいて気持ちに寄り添いA 氏と家族が人生の歩みを振りかえり, 温かな思い出を作れるよう支援をする.

 

総合援助・支援プラン

終末期がん患者は病態が急激に悪化する状況があるため,人生最期のときを家族と過ごすためには早期の退院を検討することが重要である. 疼痛の管理のためにNRS で評価スケールを用いて,注意が必要な疼痛,鎮痛剤の種類についてわかりやすくA さんと家族に指導する. 呼吸困難軽減のため,口すぼめ呼吸,安楽なポジショニングの指導を実施する. 排痰のケアについてはハフィングや体位ドレナージを実施する. 看護師は24時間患者の傍にいる存在であるため,多職種に情報発信しやすい. また,リハビリテーションとして胸郭可動域訓練,呼吸筋トレーニングなどを実施する. 精神的なフォローとして,リハビリテーションは毎日同じスタッフが関わるため,関係構築しやすく聞き出せる情報も多いため,悩みや困っていることを傾聴し多職種の共有をはかる.

 

考察

本症例を通して右肺腺がんで生じる不利益な状態の改善をはかりながら,課題や解決策を多職種で共有し,最善のケアを導きだす事が人生の最終段階にある患者のQOL 向上のために重要であると考える. 評価スケールについても各専門職で共通理解をはかっていく必要がある.

 

結語

多職種連携での学習を通して,どの職種も一人ではすべての問題を解決することが難しく,患者支援を行うことが重要であることを学んだ.将来,チーム医療に貢献できる医療人としてここで得た学びを糧とし,今後臨床の場で活躍していきたい.

参考文献・引用

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