身近なユニバーサルデザインに対する意識調査
はじめに
近年,病院や高齢者施設をはじめ,公共施設,交通機関,さらにはサービス分野においても,ユニバーサルデザイン(以下:UD)の導入が進んでいる.これは,高齢者や障がいのある人々を含む,すべての人が利用しやすい環境づくりを目指す取り組みとして,社会的にも大きな注目を集めている.そこでこの研究では,本校に在籍する学生および地域の住民を対象に,UD に関する認知状況と理解度についてアンケート調査を実施し,その結果を分析することで,実態を調査することを目的とする.
対象および方法
<対象>本校に在籍する学生(看護学科2年:29名、理学療法士学科2年:28名、作業療法士学科2年:14名、医療福祉総合学科1年:9名の計80名のうち欠損値を除いた77名),地域住民(50名).
<方法>研究者自ら対象者を選ぶ.対象者へ概要説明などアンケート協力の声掛けを行い,実施した.アンケートの内容として,性別とUD の認知度については二択形式,年齢やUD の内容理解度,利便性,必要などについては複数択で選べるようにし,回答してもらった. その後,回答されたアンケート用紙を学生と地域住民に分け,さらに,男女別,年齢別に分け統計解析を実施した.統計分析を実施するにあたり,学生においては,10代,20代,30代を3つのカテゴリーに分類した.地域住民においては,それぞれの年代の人数が少なかったため,10~20代を若年層,30~50代を中年層,60~90代を高齢層と銘し,3つにカテゴリー分けをした.統計解析は二択式のアンケート内容についてはMann-Whitney U 検定,複数択のアンケート内容についてはKruskal-Wallis 検定を使用した.
結果
研究に協力を得られたのは本校に在籍する学生の77名と地域住民の50名であった.学生においてはExcel にて単純集計したところ,UD についての質問に対し、全てにおいて肯定的な意見が多い結果となった.地域住民において,統計解析の結果から,それぞれUD 認知度×年齢に有意差(P <0.01),UD の利便性×年齢に有意差(P <0.05),UD の必要性×年齢に有意差(P<0.05)が認められた.
考察
統計分析により,地域住民の方は性別や年齢の差がどのように影響しているかを検討した.その結果,UD の認知度×年齢において高齢層は若年層や中年層と比べ,認知度が低い傾向があった.UD の利便性×年齢において高齢層は若年層と比べ,UD の利便性があまり感じられない傾向にあった.UD の必要性×年齢において,高齢層は中年層よりもUD の必要性が低い傾向となった.これは,若年層は社会のUD 化が進み,学校教育やメディアを通じてUD に触れる機会が多く、自然とその概念を理解しているのに対し,高齢層の時代にはまだUD 化が進んでおらず,また,認識するよりも先に日常に溶け込んでしまっているため,日常生活の中で意識的に認識する機会が少ない可能性がある.そのため,今後は高齢層に対してUD の意義や具体的な利点を分かりやすく伝える啓発活動が求められる.例えば,地域の集会や健康教室などの場を活用し理解を深めることができるだろう.また,UD の導入が「誰かのため」ではなく「自分自身を含むすべての人のため」であるという視点を共有することが,今後の共生社会の実現に向けて重要であると考える.
参考文献・引用
- 内閣府,令和4年度バリアフリー・ユニバーサルデザインに関する意識調査報告書 https://www8.cao.go.jp/souki/barrier-free/tyosa_kenkyu/r04/index.html





