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2025年度 課題研究発表会
ポスター演題

筋萎縮性側索硬化症(ALS)とともに 「その人らしく生きること」への支援

キーワード:その人らしく生きる美容意識自立
看護学科
山根 奈菜

はじめに

筋萎縮性側索硬化症 (Amyotrophic lateralsch rosis ;以下,ALS )は運動神経系ニューロンが 進行性に変性脱落する原因不明の疾患で, 徐々に 身体的機能が低下し,最終的には自分の意思で身 体を動かすことができなくなる過酷な病である. 「ALS とともにその人らしく生きること」とは, ALS によって崩壊されたアイデンティティを再 構築することであり,再構築によって失った自分 を取り戻すことである1).今回,美容意識が高い ALS 患者を受け持った.肌に対する美容に力を入 れていたことからスキンケアを用いた生活行動の 再構築を行った.この事例についてふり返り,「そ の人らしく生きる」ことへの支援について考察す る.

事例紹介

A 氏70代女性.検査にてALS と診断された. 病状進行により上下肢の筋力が低下し,自力歩行 は困難で日中は臥床状態が続いていた.構音障害 により意思疎通困難,嚥下機能低下に伴い誤嚥性 肺炎のリスクを有していた.食事は経鼻経管栄養, 入浴・整容は全介助であった.入院中には転倒歴 があり,臥床中も片足がベッドから落下するなど 転倒リスクが高かった.急激な日常生活動作(以 下ADL)低下により,入院生活の中で強いスト レスや心理的苦痛が生じていた.入院前から美容 意識が高かった.

看護の実際

A 氏は入院前から美容意識が高く,スキンケア に力を入れていたことから,急激な病状進行によ るストレス緩和を目的に,自立して行うことので きるスキンケアの再構築に取り組んだ.実施は 入浴後および非入浴日の朝1回を基本とし,コッ トンで頬・口周囲・額へ化粧水と乳液を塗布し た.スキンケア用品はA 氏の視野に入る位置に 設置し,本人のペースで実施できるよう鏡を設置 し,自力で行える環境を整えた.事前にボトルの 蓋を緩めるなど工夫することで,A 氏自身が自力 で化粧水を取りコットンに浸すことが可能となっ た.上肢の不安定さには肘下にタオルを置き安定 を図った.実施後は気持ちがよかったかの問いか けに笑顔でうなずく様子が見られた.

考察

A 氏のもつ美容意識に価値を置いてスキンケア を自分でできるよう工夫し,うなずきや手を握る サインなど非言語的コミュニケーションを活用し ながら思いと自立を尊重した支援を行った.吉田 は,「その人らしく最期まで尊厳ある生を全うで きるには,その人が充実して取り組んできたこと を尊重し,その時々の状態にあった,その人らし さを発揮できる援助が必要である」2)と述べて いる.今回,A 氏が大切にしてきた美容に対する 価値観を大切にし,残存機能を最大限に活かして スキンケアの自立を工夫したことは,A 氏の尊厳 の保持につながったと考える.そして,病ととも に生きるA 氏の,「その人らしく生きること」へ の支援につながったと考える.

結論

A 氏が大切にしてきた美容意識に目を向け,残 存機能を最大限に活かしてスキンケアの自立を工 夫したことは,A 氏の尊厳の保持につながり,「そ の人らしく生きること」への支援につながった.

参考文献・引用

  1. 隅田好美:筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の役割意識の変化.社会福祉学,第55巻第3号; 41 ‐ 52,2014.
  2. 久保川純子ら:その人らしさを尊重した看護実践.京都府立医科大学附属病院看護部看護研究論文集,2022.

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