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2025年度 課題研究発表会
口述演題

人工股関節全置換術後の その人らしい生活を支える多職種連携

キーワード:QOLその人らしさ在宅復帰禁忌肢位
作業療法士学科理学療法士学科看護学科
岸田 太平(看)/丈達 もか(看)/山本 そら(看)/桐本 愛夏(理)/中村 芽衣音(理)/藤岡 桂汰(理)/安部 真凜(作)/前川 幹登(作)

はじめに

 今回,多職種連携授業を通して変形性股関節症患者の退院支援・調整についてグループワークを行った.患者の在宅復帰を支援するにあたり,「その人らしさを尊重しながらできることを増やす」を目標に設定した.日常生活動作への過信や脱臼・転倒リスクなどの課題がある中で行動面の“こだわり”に着目し,考察を行った.

症例紹介

 53歳,女性,専業主婦.幼少期に先天性股関節脱臼の既往があり,46歳の時に右変形性股関節症と診断.疼痛悪化により右人工股関節全置換術(後方アプローチ)を施行.性格はせっかち.術後は順調に回復し,歩行器での移動が可能.術後12日目に退院予定.趣味はお寺に通い読経することであり,温泉が好きで入浴を楽しみにしている.家族構成は夫(55歳)との2人暮らしで,息子3人はいずれも独立している.夫は腰痛により入院予定.退院後は息子が交代で支援に来る予定であるが,日中は不在となる.

在宅退院に向けた課題

 術後10日目には歩行器での移動が自立しており,身体的には退院可能な状態であった.しかし,退院後に“その人らしい生活”を送るためには2つの課題がある.ここでいう“その人らしさ”とは,「お寺に通い読経をすること」と「温泉が好きで入浴を楽しむこと」である.1点目は,お寺での活動に伴う脱臼リスクである.正座や草引きなど和式動作が多く,術後の禁忌肢位をとりやすい.また,夫の入院中は日中独居となるため,転倒時の対応が難しい点も課題である.2点目は,「温泉が好きだから入浴は妥協したくない」という本人の希望に対して,入浴動作中に脱臼肢位をとる可能性がある点である.浴槽縁が高く,動作空間が狭いため,安全に入浴を継続するには環境面の工夫が必要である.

総合援助・支援プラン

 変形性股関節症は,進行により歩行や日常動作が困難となるため,医療的治療に加え,生活環境や習慣への配慮が重要である1).1点目の課題に対しては,看護師が地域の送迎支援やお寺での介助体制を検討し,脱臼や転倒リスクを防ぐための注意点をまとめたパンフレットを作成する.理学療法士は禁忌肢位の指導や股関節周囲筋の筋力強化を行い,作業療法士は福祉用具を活用した安全な動作姿勢を支援する.2点目の課題に対しては,看護師が入浴介助方法や転倒時対応を家族へ指導し,理学療法士は浴槽出入り時の安全動作を実演・指導する.作業療法士は浴槽台や手すりの活用など環境調整を行い,入浴を安心して継続できるよう支援する.

考察

 本症例を通して,術後生活における「その人らしさ」の実現に向け,多職種が連携して支援する重要性を再確認した.本症例では「お寺に通う」「入浴を楽しむ」という思いがあり,それがまさにその人らしさを象徴していた.その思いを尊重し,安全に実現するために3学科で協力し,できる限りの支援方法を検討した.こうした過程を通じて,知識の提供だけでなく,動作確認や生活場面の具体的なイメージ共有の大切さを学んだ.また,家族の協力を得る際にも,本人の思いを中心に据えた支援の重要性を改めて認識した.

結語

 多職種連携授業を通して,疾患理解だけでなく,患者の生活背景や価値観に寄り添う支援の重要性を学んだ.また,各職種の強みを活かし,互いに補い合い尊重し合うことで,より効果的な支援が可能になることも実感した.今後は知識と技術に加え,患者に寄り添う視点を持ち,チーム医療に貢献できる医療人として成長していきたい.

参考文献・引用

  1. 日本整形外科学会編変形性股関節症診療ガイドライン(改訂第3版)

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