片脚立位保持困難なダウン症児における姿勢制御機能改善への介入
はじめに
今回,ダウン症児の片脚立位保持獲得による日常生活動作と運動機能の向上に向けた理学療法を行った.保護者の要望等を受け,日常生活で立ったまま靴やズボンが履けるようになること,遊びの幅が広がることで,QOL 向上を目的とした介入を行なった.なお,発表にあたり対象児の保護者からの同意を得ている.
事例紹介
A 氏,放課後デイを利用している10歳未満女児.妊娠37週1日で帝王切開出産.低出生体重児1596g,ダウン症.合併症:房室中隔欠損症,嚥下障害.既往歴:ファロー四徴候,肺高血圧症.成育歴:定頸7ヶ月,寝返り7ヶ月,自立座位1歳4ヶ月,四つ這い1歳2ヶ月,歩行開始1歳7ヶ月,発語2歳6ヶ月.
理学療法評価
A 氏は発語が2語文である.集中力の持続性は乏しく,指示に従うことが難しい場面が多くある.運動機能は,走ることや跳躍動作において特に問題はない.初期評価JSI-R においても視覚項目以外は約75%の子供に見られる典型的な状態と特に目立った感覚の遅れはないが,片脚立位や片脚立位を伴う動作を行うことは難しい.片脚立位保持時間は2秒である.足趾の浮き,立ち直り反応の不十分さ,足関節の動揺が見られ荷重時の支持性に課題がある.これらは姿勢保持に関与し,片脚立位が困難となる要因の一つと考えられる.また,ダウン症の特徴である,低緊張,下肢・体幹筋力の弱さ,姿勢制御反応の未熟さも複合的に考えられる.そのため,足趾を含めた足底全体で支持基底面を確保し,立ち直り反応が適切に働くこと,足関節を中心に身体を安定させ,片脚立位の保持獲得を目指す.また,体幹や下肢の筋力・姿勢制御反応の向上を図り,日常生活や遊びの中で安定した姿勢で活動できる姿を目指す.
介入方針
集中力の持続が乏しく指示理解が難しいため,遊びを通して足趾把持による支持基底面の確保と立ち直り反応,足関節の安定性,体幹・下肢の筋力と姿勢制御反応の向上を図っていく.
経過
トランポリンや坂道・階段昇降,バランスボールなどで介入を行なった.1日40分のうち集中できる時間は約15分で,興味のある遊びを優先し自由に行動する場面も見られた.
結果
片脚立位保持時間は2秒であったが保持中に足趾で踏ん張る様子,足関節の動揺の減少が見られた.検査時には集中力の持続が難しく,保持時間が短くなった.一方で,一本橋を渡る際には立ち直り反応が確認され,トランポリンでは初期に困難であった回転動作が可能となり,下肢筋力・体幹の支持性,姿勢制御の向上が見られた.
考察
片脚立位保持時間に大きな変化はないが,足趾で踏ん張る様子が確認できた.これは,足趾を使う活動を行ったことで,足趾把持能力が高まり,支持基底面の確保が可能になったためと考える.また,足元が不安定な環境で,昇降を繰り返したことで,足関節周囲筋の協調的な活動と,姿勢変化に対する反応や固有感覚入力が高まり,安定性が向上したと考える.さらに,立ち直り反応が促せる活動や持続的な運動を取り入れたことにより,体幹の支持性と下肢筋力,姿勢制御能力の向上が示唆された.現在A 氏は着替えを行う時などに立位で行う場面がみられ始めている.今は支持物につかまりながら行っているが,今後はこれらの機能をさらに高め,支持物なしでズボンや靴の着脱が行えるように現在訓練中である.





